優秀な人が大量に辞めていく企業の共通点は? 「人材流出企業の覆面座談会」で明らかに:「滅びゆく会社」の特徴とは(5/6 ページ)
ただでさえ人手不足で人材を集めるのが難しいこの時代に、惜しげもなく優秀な人材を流出させてしまう企業では、いったい何が起こっているのか――。
人材流出企業にならないためにできること
――人材流出企業にならないためには、どうすればよいのでしょうか?
営業 経営やマネジメント層が現場感覚をなくしていなければ、仕事の相談もしやすいし、自分に対する評価にも一定の納得感はありますね。
広報 ただ、以前は現場感覚があった人でも、現場を離れてしまうとそれが薄れていくと思うんです。現場感覚を失わないためにはどうすればよいのでしょうか?
サポート 「プロ経営者」として知られる松本晃さんは、カルビーの社長時代に全国40カ所ほどの工場や支店、子会社をまわって社員の声を聴き、自らの考えも直接、話していたそうですよね。
人事 これだけ変化の激しい時代に、経営・マネジメント層が現場の全てを把握し続けるのは困難です。そんな中でのマネジメントのポイントは、リーダーが「現場感覚がない」という弱みを部下に見せられるかどうか。主従関係ではなく、チームとして協力することで成果を上げていこうというマインドがあれば、素直に部下に「教えてほしい」といえるはずなんです。
社員の専門性に敬意を払い、信頼して任せる
技術 当社は人材流出企業ながら、エンジニアの離職率は低いんです。その理由はエンジニアの専門性に敬意を払い、信頼して任せているからだと思う。そうでないと、スペシャリストを束ねることはできないですよ。
営業 優秀な人たちが自由にやれたほうが良いということですかね。
技術 ただ、勘違いしてはならないのが、「エンジニアさえいれば何でもできる」という過度なエンジニア信仰が存在するんですよ。技術の力だけでなんとかしようとして「コード書きたい君」を採用するのは、大企業がSIerに頼んでやっていることとほぼ変わらない。エンジニア採用が急務だからといって誰彼かまわず採用すると、後でさらなる問題が発生しますね。
人事のスペシャリストを置く
技術 人事だけではなく、経理や情シスもそうなんだけど、社員が50人を超えてくるとスペシャリストが必要だと思いますね。ノリだけではやっていけなくなるから。ただ人事は、素人でも口を出せそうな雰囲気があり、専門性がないがしろにされやすい。
人事 それがつらいところですね。経営層もそれぞれが個別の「人事観」を持って口を出してきて、混乱のもと。
サポート あの……人事って、何がモチベーションの源泉なんですか?
人事 その解のなさが、高い挑戦であり、モチベーションにもなっていますね(照れ笑い)。企業はサービスを通して人々を幸せにするわけですが、基本的に人間は、自分がハッピーじゃないと人の幸せを考える余裕はない。社員の気持ちを満たす仕事が人事なのだと思いますね。
営業 なるほど。余裕がないから目先の利益に走るんですよね。だから、カネカネ言っている会社は腐っていくのかな。
入社する前に「人材流出企業」を見抜くには
――誤って人材流出企業に入らないためにはどうすればよいでしょうか?
一同 うーん……。
営業 転職サイトにある企業の口コミを見る、中に知り合いがいるなら話を聞く――などは自己防衛手段として有効だと思いますが、それ以外の解決策があるなら私も知りたいですよ。
技術 転職の口コミサイトには、当社についても力作が上がっています。
人事 1ついえるのは、入社前のインターンが一般的になれば、雇う側、雇われる側双方の入社後のミスマッチは減ると思うんですよね。
企業の内部から、あるポジションに登用するときには結構な時間をかけて選定するのに、中途採用だと通常は面接だけで決めてしまう。これがミスマッチの原因ではありますよね。
技術 エンジニア採用でインターンを取り入れている会社はあるよね。業務委託契約を結んで、数日間の有給をとって一緒に働いてもらう。働いた分のお金は入社祝い金として渡されるか、入社に至らなくても業務委託費として支払われる。
広報 確かに、インターンとして既存の社員と働くことによって、「一緒に仕事ができるか」「志が同じ仲間として働けるか」を判別する上での精度は上がりますね。でも、経営やマネジメントに関しては、それを数日で見抜けますかね?
一同 確かに……。
広報 それに、会社の文化って案外すぐ変わるんですよね。半年前に良いといわれていた会社が、今も良いとは限らない。変化の時代には、いつも最新の情報を見ておく必要がありそうですね。
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