高齢者ドライバー対策、「専用免許」では解決しない:自動ブレーキ搭載車両(2/3 ページ)
日本政府は「自動ブレーキ搭載車両のみ運転可能」という高齢者専用免許案を真剣に考えているらしいが、大多数のお年寄りにとって現実的な選択肢にはならないだろう。「アメとムチ」の組み合わせて……。
最も有力なのが(小生も何度かブログなどで言及している)「ナルセワンペダル」というアクセルペダルに交換することだ。構造上合理的で(「踏み間違い」自体が生じない)、かつ副作用的問題がない。工賃と合わせて20万円ほど(地域によっては補助金で半額くらいになるそうだ)なので、アクセルとブレーキの踏み間違いを完全になくせる効果を考えたら妥当な投資だ。
もっと簡単で安く、最近人気を博しているのが「ペダルの見張り番」(IとIIがあるらしい)という商品だ。やはり後付けの機器で、センサーが急激なアクセルペダルの踏み込みを感知し、加速しないようにしてくれる。最寄りのカー用品販売店「オートバックス」で、工賃込みで3〜4万円程度で売っているはずだ(しかも東京都は購入費用の9割を補助してくれる方向に動いているそうだ)。他にも同様の後付けセンサー利用タイプの商品が中小メーカーや自動車メーカーから出ているので、このタイプが意外と短期間で普及するのかもしれない。
ただし気をつけないといけないのは、これらは急発進・急加速自体をできなくする機能なので、危機回避のために本当に急加速が必要な場面でも、アクセルを思い切り踏んでも加速しないようになってしまうことだ(当然だが)。
そして以上についてはあくまでブレーキとアクセルの踏み間違いに関する防止策であり、認知機能の低下が引き起こす他の問題、例えばハンドル操作ミスや信号無視などの防止効果はないことは理解しておく必要がある。
そうした心配をぬぐえない、老化により全般的な認知・判断機能が少しずつ衰えつつある高齢者たちには、やはり『自動ブレーキ搭載車両』に買い替えるか、『免許返納』かの2択しかないのだろうか。そんなことはない。政策としてはもっと柔軟かつ実際的に考えるべきだ。
高齢者ドライバー対策で参考になる取り組み例がニュージーランドにある。彼の国もまたご多分に漏れず高齢者ドライバーが増えているが、「自主的に免許を返納するか、自動ブレーキ搭載車両を買いなさい、さもないと悲惨な事故の加害者になるぞ」などという無慈悲な脅しを言う訳ではない。なにせ日本以上のクルマ社会なのだ。代わりに「アメ」と「ムチ」の組み合わせによる現実的な方策で高齢者の事故を抑制しながら、彼らの生活を支えようとバランスを取っている。
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