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池澤夏樹が明かす作家哲学 「“飽きる”ことも仕事のうち」池澤夏樹インタビュー【後編】(3/5 ページ)

作家・池澤夏樹の重要な作品テーマの1つ、「科学」。池澤氏は「科学」の視点から小説、日本社会、そして人類の未来をどう見通してきたのか。3回シリーズの最終回――。

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読者は想定していない

――出版不況と言われますが、意義のある作品は今もこうして次々と生み出されています。ただ、若年層を中心に小説、活字離れは深刻です。

池澤: まあ、そんなに(小説の)部数は出なくてもいいかなと思います。夏目漱石の読者は何人いたのか? という話です。確かに(小説は)大衆化したけれど、本当に高度な物だったら楽しめる人の数はそんなに多くないだろうし。

 僕は何とか食べてこれたから、運が良かったと思いますよ。高度経済成長している豊かな時期だったし。雑誌は取材にどんどん(僕を)出してくれたし、新聞連載では南極にも行けました。これからは大変だろうと思うけれども、もともとそんなに大衆的なメディアでは無かった部分もある。自分勝手な話をワガママにガンガン書こうとしたら、そう読者は多くないでしょう。さまざまな例外もあるから、分からないですけれどね。

――ちなみに、池澤さんは小説を書く際、読者の存在を想定するのでしょうか?

池澤: しないです。読者層は想定しません。ただ、「ここまでワガママにやると新聞小説ではまずいよな」とか、分かりやすいように手を打ってあげないと(読者が)ついてこない、といった場合もあります。日経(新聞の連載小説『ワカタケル』)で、林真理子さんの次が僕だから、林さんのようには読まれないけれど、その3分の1くらいは読まれてほしい。と言いながら、ずいぶんワガママしていますけれどね(笑)。

――今後、小説家という仕事の在り方は変わっていくのでしょうか?

池澤: 分かりませんね。多様化はするでしょう。それこそ、銀行で地道に働き続けながら、年に3〜4本短編を書く人もいいんじゃないでしょうか。今度は、大手出版社とは別の発信の方法があるのだから、そこからすごい人が出てくればいいし。

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