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北朝鮮ツアーが謎のブーム!? “近くて遠い国”のインバウンド戦略を追う気鋭の北朝鮮研究者が分析(1/4 ページ)

北朝鮮で今、外国人を呼び込む観光が盛ん。“近くて遠い国”のツアー内容とは? 気鋭の北朝鮮研究者が迫る。

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編集部からのお知らせ:

本記事は、書籍『北朝鮮と観光』(著・礒崎敦仁 、毎日新聞出版)の中から一部抜粋・再構成し、転載したものです。気鋭の北朝鮮研究者が迫った、かの国の観光とインバウンド戦略についてお読みください。


 筆者が初めて北朝鮮を観光したのは1994年、金日成が死去した年のことであった。当時はまだ個人手配で北朝鮮を訪れるのが一般的ではなく、旅行会社が主催するツアーに参加するしかなかった。以来、筆者は複数回にわたって北朝鮮を訪れているが、近年は平壌中心部に「消費者」と呼ばれる富裕層が登場し、貧富の格差は確実に広がっている様子が見て取れる。

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万寿台大銅像(平壌市)で記念撮影する人々

平壌で外国料理店増加、一方で道路事情は悪化

 25年前に流しのタクシーはなかったが、平壌のほか主要な地方都市にもタクシーが急増した。しかも、乗車料金は米ドル札で支払うのも一般的なようである。米朝関係の悪化に伴い、2004年以降は北朝鮮で使う外貨は公にはユーロであり、外貨商店での価格もユーロ表示になったが、もはやその通達は意味をなくしているのが現状である。平壌には沢山(たくさん)のレストランがあるが、富裕層や外国人向けのものも多く、それらは一般の庶民は利用しづらい価格設定である。このようなレストランの価格表示も、ドル表示されるようになってきた。

 平壌中心部には高層ビルが立ち並び、カネさえあれば急増した外貨商店やイタリア料理、タイ料理などのレストランも利用できる。ただ平壌中心部から離れれば、電力事情すら非常に厳しいものがある。地方都市によっては、外国人の宿泊が可能なホテルでさえ停電続きで、テレビすら見られないことも多い。

 一方、国内の移動については流動化が進んでいる。地方都市間を直接結ぶ乗り合いバスが急増した。以前であれば、乗り合いバス自体はあったが、平壌と地方都市を結ぶ路線しか見られなかった。このような物流・交通の活発化は、当初から政府が計画して実施したものではなく、自然発生的な経済を政府が追認する形で発達してきたようである。

 道路事情は25年前に比べて格段に悪化している。経済制裁の影響であるとも考えられるが、一方で、中国から大型トラックが入ってくるようになったため、道路の劣化が進んだという事情もある。

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パリより10m高い「凱旋門」(平壌市)
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