リニアを巡るJR東海と静岡県の“混迷”、解決のカギは「河川法」か:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
リニア中央新幹線建設を巡る環境問題などの対応策について、静岡県に対する回答をJR東海が出した。しかし、県は納得していない。なぜ両者の議論はかみ合わないのか。問題点を整理し、解決方法を探ってみたい。
超電導リニア方式を採用する中央新幹線について、静岡県が建設許可を出さない。理由は大井川水系の水利問題と南アルプスの環境問題が解決していないからだ。静岡県の要求に対してJR東海が回答した。しかし静岡県は納得しない。今回は問題点を整理し、解決方法を探ってみたい。
世間の誤解を1つ解いておこう。静岡県が「静岡空港新駅設置と引き換えにリニアを交渉材料にしている」という見方は間違いだ。これはハッキリさせておこう。何しろ静岡県知事が6月28日の定例会見で記者の質問に「空港新駅と関係ありません。南アルプスのトンネルに関わる地域振興ということですから、われわれにとっての地域というのは南アルプスです」と明言している。
これは知事の言葉として重い。しっかりと認識しておきたい。静岡空港がある牧之原市の関係者が、静岡空港とリニアをひも付けて吹聴しているといううわさも聞くけれども、そもそも知事が否定している。違ったら責任を取っていただくべき発言だろう。
また、静岡県知事が主張する「他県の駅建設相当分の地域振興負担金」についても、実現の可能性は低いと思われる。JR東海に負担の意思はない。公共事業に対して直接根拠のない出資という前例を作ったら、今後の公共事業に悪しき前例を作ってしまう。そもそも他県のリニア駅は自治体の利益だけではなく、JR東海の営業拠点でもある。ソロバンをはじいた結果だ。決して一方的に駅をプレゼントしたわけではない。
問題の長期化の原因は双方の説明不足にある。静岡県はJR東海に何を求めているか説明していない。だからJR東海の回答に静岡県は納得できない。
本連載では6月21日、「着工できないリニア 建設許可を出さない静岡県の『正義』」と題して、静岡県の要求についてJR東海は丁寧に回答すべきだと書いた。今回はその続きだ。7月12日、JR東海は静岡県に対し回答案を提出した。回答案は7月17日に静岡県の公式サイトに掲載された。
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