「“好きを仕事に”など、けしからん!」という人が時代遅れになったわけ(3/3 ページ)
時代は既に「好きなことをしていい」時代から、「好きなことをしないと豊かになれない」時代に変わりつつある。
「自由の使い方」をどうマネジメントするか
もちろん、光があれば影がある。
「好きを仕事にしないと豊かになれない」世界は、「主体的に動く人だけが豊かになれる」という、残酷な世界だ。自分で選び取らない限り、何も手に入らない世界。
- 「考えたくねえ」
- 「受け身でいいだろ」
- 「決められねえ」
- 「正解を教えろ」
- 「リスクを取りたくねえ」
が、貧しさの象徴になった世界。
これは、一片たりとも、人に優しくない。
「自由に生きられる」は、いつの間にか「自由に生きねばならない」に変わっていた。
もちろん「そんな世の中は間違っている」という方もいるかもしれない。「言われたことだけやっていれば、それなりに豊かになれる世界が望ましい」という方もいるだろう。そう言う人はちゃんと選挙に行って、政治を変えよう。ただ、現在の世の中の趨勢はテクノロジーを中心とした「専門家」が必要とされる世の中であり、急には変わらないだろう。経済的に豊かである、ということは、そういうことになってしまったのだ。
だから、現代人にとって最も重要な教養は「自由の使い方」だ。
- 自らの人生をどうマネジメントするか。
- 意思決定をどのように行うか。
- どう試すか。
- 何を学習するか。
――そういった「自由」の使い方こそが、長い人生を豊かに過ごすための鍵になる。
もちろん「自由」は軋轢(あつれき)を生む。特に「自由」を使いこなせる人々と、使いこなせない人々の断絶は、絶望的なほど広がる可能性がある。何しろ、「自由」とは「他者から嫌われることだ」と、哲学者のアルフレッド・アドラーが言ったぐらいだ。
哲人: すなわち、「自由とは、他者から嫌われることである」と。
青年: な、なんですって?!
哲人: あなたが誰かに嫌われているということ。それはあなたが自由を行使し、自由に生きている証であり、自らの方針に従って生きていることの印なのです。
あるひとが「自由」を謳歌すればするほど、「嫌う」人が増える。それは人間の宿命のようなものである。
自由を謳歌するための2つの条件
余談だが、私自身は「好きを仕事に」というのは、若干ショートカットされた言い方だと感じている。単に「好きなこと」をしているだけでは、仕事にならないからだ。仕事はマーケットが必要で、マーケットを見る目のない人は、「好きを仕事に」は実現できない。
従って、自由を謳歌するための条件は、マーケティング能力、すなわち
- 市場に自らの能力やプロダクトさらす
- 市場とマッチしていない場合は、学習・修正を行う
の2点を獲得する必要がある。
その上で、「自由の使い方」を教養として身に付ければ、まあ、一生困らないのではないだろうか、と思う。
ただ、このような生き方に適合できない方もたくさんいるだろう。結果として、「自由を謳歌できた人々」は、そのような人に手を差し伸べる義務を負うと私は考える。
安達裕哉プロフィール
1975年東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。仕事、マネジメントに関するメディア「Books&Apps」を運営する一方で、企業の現場でコンサルティング活動を行う。Twitterアカウントはこちら。
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