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「賃金上げたら日本は滅びるおじさん」の言っていることは、本当か:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
「最低賃金の引き上げ」問題をめぐって、議論がヒートアップしている。「日本の低賃金にメスを入れるべき」という声がある一方で、「世紀の愚策」などと猛烈に難癖をつけている人たちも。この問題、どちらに説得力があるのかというと……。
本日、甲子園が開幕して球児たちの熱い夏が始まったが、実はおじさんたちの世界でも甲子園に負けず劣らずの「熱闘」が繰り広げられているのをご存じだろうか。
それは、「最低賃金の引き上げ」である。
先進国の中でもダントツに低く、ついに韓国にまで抜かれるなど、もはや日本名物になりつつある「低賃金」にメスを入れるべきという政治の動きがあることは説明の必要もないだろうが、それに対して「世紀の愚策」などと猛烈な勢いで難癖をつけているおじさんたちがいるのだ。
ここでは便宜上、「賃金上げたら日本は滅びるおじさん」とでも呼んでおくが、彼らの主張をざっくり言うと、こんな感じになる。
- 賃金をあげたらコンビニや零細企業がバタバタ潰れて失業者が溢れかえる
- 企業の生産性が上がれば、賃金も自然に上がるので、強引な賃上げなどせず中小企業支援をすべき
- 最低賃金を急激に引き上げて失業率が激増した韓国の二の舞になる
そんな「賃金上げたら日本は滅びるおじさん」のバチカン的な位置付けが、日本商工会議所、全国商工連合会、全国中小企業団体中央会といういわゆる「中小企業三団体」。ここがガッチリとスクラムを組んで「経営を直撃し、雇用や事業の存続自体をも危うくすることから、地域経済の衰退に拍車をかける」(最低賃金に関する緊急要望)なんて調子で“賃上げ不況”の恐怖を熱心に説いているのだ。
その甲斐あってか、マスコミ内の「応援団」も増えている。例えば、日本経済新聞は「急速な最低賃金上げへの懸念」という社説を8月1日に掲載。「経営が悪化する企業が広がれば地域経済にマイナスだ」と、中小企業三団体の主張を丸写ししたようなことを言い始めた。
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