2015年7月27日以前の記事
検索
連載

「賃金上げたら日本は滅びるおじさん」の言っていることは、本当かスピン経済の歩き方(2/5 ページ)

「最低賃金の引き上げ」問題をめぐって、議論がヒートアップしている。「日本の低賃金にメスを入れるべき」という声がある一方で、「世紀の愚策」などと猛烈に難癖をつけている人たちも。この問題、どちらに説得力があるのかというと……。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

賃金上げないと日本は滅びるおじさん

 一方、このような「賃上げ亡国論」を、そういうブラック経営者みたいな発想から抜け出せないから、20年経っても一向に経済が持ち直さないんだよ、とバッサリ斬り捨てるのが、「賃金上げしないと日本は滅びるおじさん」である。

 彼らの理論的支柱となっているのが、元ゴールドマン・サックスの“伝説のアナリスト”として知られ、政府の観光推進政策にも大きな影響を与えている、デービッド・アトキンソン氏だ。

 これまで著書やネット記事で、生産性向上には企業規模を大きくすることが必要不可欠として、中小企業の統合・再編を促すため、最低賃金を毎年5%ずつ引き上げるべきだと強く主張してきたアトキンソン氏は「賃上げ亡国論」に対して以下のように反論している。

  • 最低賃金を20年間引き上げ続けた英国の中小企業では、廃業率も上がっていないし雇用も減っていない。むしろ、経営者の工夫を促して、労働者のモチベーションを上げて労働生産性が向上している
  • 「生産性が上がれば賃金が上がる」というのはもはや過去の話で、諸外国ではすでにこの因果関係を逆さまにして経済政策が取られており、成果も出てしっかり検証もされている。また、中小企業の生産性が上がるのを持ち続けた結果が、今の日本経済の低迷なので、これまでのような「中小企業保護」を続けても未来はない
  • 韓国の引き上げ率は2年間で30%と日本の引き上げ率とかけ離れているので、そもそも比較にならない

 アトキンソン氏と言えば、日本の大手銀行が17もあって群雄割拠していたバブル期に、「日本の主要銀行、2〜4行しか必要ない」というレポートを出した「慧眼(けいがん)」で知られる経済分析のプロフェッショナル。つまり、最新の研究データとロジックに基づいた、ドライな科学的考察を支持するのが「賃金上げないと日本は滅びるおじさん」なのだ。


バブル崩壊後、日本の銀行は大幅に減少した

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る