「賃金上げたら日本は滅びるおじさん」の言っていることは、本当か:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
「最低賃金の引き上げ」問題をめぐって、議論がヒートアップしている。「日本の低賃金にメスを入れるべき」という声がある一方で、「世紀の愚策」などと猛烈に難癖をつけている人たちも。この問題、どちらに説得力があるのかというと……。
「経営者目線の政策」を進めてきた日本
では、この「経営者目線の政策」を進めてきた日本はどうなったかというと、幸せになったのは、安い給料でコキ使える労働者を手にした一部の経営者だけで、大多数の日本人は不幸となった。
低賃金労働者が大量に国内流入したことで、日本の労働者の賃金もビタっと低い水準に固定されてしまったからだ。コンビニ、居酒屋、農業など日本の低賃金労働の現場がことごとく、外国人労働者が溢れているのがその証左である。
経営者目線の政策が、日本にさまざまな災いをもたらしてきた例はこれだけではない。令和の日本にも引きずるある問題も、実は「経営者目線の政策」が招いた。
発端は1910年代に入って、北海道や九州の炭鉱で深刻な「人手不足」が叫ばれたことだ。
当時、日本は富国強兵政策で、産めよ増やせよで人口は右肩上がりで増えていたが、最低賃金でコキ使われるコンビニバイトが若者に敬遠されるのと同じで、ブラック労働の極みである炭鉱労働者のなり手が不足していた。本来、日本政府が主導して、労働環境や賃金の是正をしなくてはいけないところだが、当時は人権なんぞクソくらえという時代。「日本人がならないのなら海外から労働力を入れるしかない」という経営者たちの要望を受け、「試験的」という名目で、三菱、三井などの炭鉱に朝鮮人労働者約700人の受け入れを認めるのだ。
そう聞くと、もうお分かりだろう。これをきっかけに、「日本人に敬遠される仕事は朝鮮人へ」という当時のビジネス界の常識ができ上がった。また、この「低賃金労働者の大量流入」によって、小林多喜二の「蟹工船」で描かれたような、ブラック労働を日本の労働現場に定着させることになるのだ。
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