トラックレンタル業界の“異端児”が繰り広げた「違法すれすれの錬金術」――見せかけの急成長が招いた倒産事件:あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(6)(5/5 ページ)
成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。
代表・M氏の「おとこ気」も力尽きる
これまでPROEARTHの成長を支えてきた銀行、リース会社は一斉に手を引き始めた。その一方、窮状に手を差し伸べ、急接近していく業者も現れる。情勢は混沌としていたが、実は同社をよく知る人であればあるほど、「年内に倒産する可能性は低い」「そもそも、法的整理は絶対にしないのでは?」と見ていた。
その理由は、同社代表・M氏のキャラクターにある。
巨漢でこわもてのその風貌は、コンプラ重視の今の時代には異端視されるに十分なオールド・スタイル。多分に誤解される側面を持っていたが、その一方、高い経営能力、中長期的なビジョンと並々ならぬ思い入れを持っていた。資本提携でも第二会社でも、生き残るためなら何でもやると見られていたのだ。
しかし、その後、2度目の決済不履行。民事再生法適用の申請を提出する。一度は建設業の企業が名乗りを上げたものの取り下げ、18年2月1日、PROEARTHは、東京地裁から民事再生手続き廃止の決定を受ける。
業界内での不信感に金融機関からの信用不安が重なり、そして大口取引先の倒産による多額の焦げ付きによって資金繰りが破綻。出口の見えない建設不況のなかで生き残りをかけ、違法すれすれの営業スタイルを構築したPROEARTHだったが、ひとえに「信用」なくしては、どれほどの急成長も頓挫してしまうことを物語っている。
著者プロフィール
帝国データバンク 情報部
1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。
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