ホリエモン的“多動力”の逆張りで生きよう えらいてんちょうの“ショボい”キャリア論:“静止力”で地方の名士になる!?(5/5 ページ)
ホリエモンなどが提唱する“多動な生き方”が脚光を浴びている。しかし著者はその限界や、多くの人には非現実的な点に着目。むしろ逆の“静止力”を伸ばすべきと説く。
静止力を発揮して、目指せ「地元の名士」
「静止力」とは、自分がここだと決めた場所を終生の拠点に設定し、その拠点を中心に活動しながら、成功を収めていくための能力です。そして、この静止力における成功こそが、ズバリ、本書副題でもある「地元の名士」になることです。
前置きが長くなりましたが、静止力を発揮し、いかにして地元の名士の座につけばいいのか。その方法を、誰もが実践可能なものとして紹介していくのが本書のメインテーマです。
とはいえ、ここまで多動力を中心に話を進めてきたので、急に静止力だの地元の名士だのといわれても、ピンと来ない人もいるでしょう。そこで、まずは改めて多動力のデメリットを列挙しますので、その上でなぜ私が静止力を提唱するのかを理解していただきたいと思います。
(1)多動を発揮できる期間は、人生においてあまりにも短い
(2)多動力を主体とした人たちが増えると、社会が機能しなくなる
(3)多動を実践した後に挫折すると、居場所を失う恐れがある
(4)多動の人には重要な仕事を任せにくい
(5)多動の人が増えると、地方の荒廃が加速する
(1)から(3)はすでに述べた内容なので、(4)と(5)について補足します。
(4)は、多動を繰り返す人は、周囲に「いつ、いなくなってしまうか分からない」という不安を抱かせ、長く働いている人に比べて信用されにくくなります。「コイツに任せて大丈夫だろうか? やっぱり心配だから簡単な仕事でもやらせておくか」といった具合に、長期的な仕事や重要な仕事を任されるチャンスを逃してしまうのです。その結果、実績を重ねるまでに時間がかかり、社会的信用を得ることからも遠ざかってしまいます。
(5)は、仕事にしても娯楽にしても、あらゆる好きなモノを追い求めると、必然的に選択肢の多い都市部に落ち着くという傾向が現れます。つまり、多動力の人が増えると、その分だけ地方から労働者が離れることとなり、地方の荒廃が進んでしまうわけです。
さて、以上を踏まえた上で、静止力のメリットをご覧ください。
多動する若者が増える中、静止する人の貴重性・重要性が高まる
これだけです。「本当かよ、もっとあんだろ!」と思った人もいるかもしれませんが、これが静止力における最大かつ最強の武器です。早い話が、これだけで多動力のデメリットすべてをカバーできているんです。
それだけではありません。静止する人の貴重性・重要性は、自身の拠点においても有効です。つまり、拠点周辺での自らの存在感を高めることで、地元の名士になるための距離がグッと近づくのです。
今後、少子高齢化や多動性の潮流を受けて、我が国の人手不足・後継者不足は、よりいっそう深刻化していきます。顕著なのは地方ですが、都市部でも必ずや後継者不足が深刻化すると断言できます。
インターネットが台頭し、遠く離れた人とも簡単につながることができる現在、プライベートでもビジネスでも、ネットを介したコミュニケーションを重視する傾向が強まっています。この結果、リアルの交流がおろそかになり、かつては当たり前だった地域内でのリアルな交流も失われつつあります。
実際、平成29年度版の総務省『情報通信白書』のグラフを見ていただければはっきりと分かります。1日あたりのモバイルからのインターネット利用時間は、各年代を合わせた全体平均で2012年の38分から、2016年には61分と1・6倍にもなりました。その利用内訳は「SNS」や「メールの読み書き」「ブログ・Webサイトの読み書き」で大半を占めています。
一方のビジネスシーンを見ても、一部のIT企業ではリモートワークを取り入れており、中でもソニックガーデンという会社は本社家屋を撤廃して、全社員リモートワークが主体となっています。
参考までに、主なSNSの年代別利用率もグラフ化しましたが、このようなネットコミュニケーションが主体となった現在、私は逆に大きなチャンスを感じています。リアルな人間関係が希薄になりがちないまだからこそ、自分の周りに住んでいる「自分の地域」の住民との交流を大切にし、老若男女から信頼関係を築いていくことができれば、新参者が一代にしてその土地の名士の座をつかむことも夢ではありません。
事実、すでに私は行動に移していますし、よりレベルを上げた「複数の地元で名士になる」や「赤の他人の墓守になる」を目指しているところです。
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