信用失墜が企業の「死」――親密取引先の破綻で連鎖倒産した“建機レンタル業界の異端児”:あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(7)(4/4 ページ)
成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。
「優秀な経営者」が「一線を越えた」成れの果て
PROEARTHの支払遅延が発生したのは18年夏だが、実は16年にも何度か資金繰りに詰まった破綻の危機があったと言い、実態は相当な綱渡りだった。
結局、バンクミーティングは開催されることはなかった。
金融機関は早々に見切りをつけており、スポンサーもつかなかった。ある大手メーカーの名が取り沙汰されていたが、PROEARTHのときにも、ある企業がいったんスポンサーとして名乗りを上げて降りたのと同様、あえて火中の栗を拾う者はなかなかいない。債権者説明会も荒れることなく、淡々としたものだったという。
4カ月もの間、散々に粘っておきながら、なぜ簡単に白旗をあげたのか。なぜ「民事再生」ではなく「破産」だったのか。もし、Y社長が本当のことを語り、誠心誠意、理解と協力を求めていたらどうなっただろうか。PROEARTHによるダメージはあまりに大きく、やはり連鎖倒産は避けられなかっただろうが、再起の芽は残されたかもしれない。
両社ともに経営者は間違いなく優秀だった。しかし優秀であるが故に成長を急ぎ、守るべき一線を越えた。
過ぎたるは猶及ばざるがごとし――ビバックは、なりふり構わぬ不渡り回避策に終始し、業界からも金融機関からも「信用」と「関心」を失ってしまった。同社の倒産は、PROEARTHのそれ以上に、経営者が誠意を示し、周囲をつなぎとめられるかどうかが企業の明暗を分ける典型例といっていいだろう。
著者プロフィール
帝国データバンク 情報部
1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。
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