借り入れ依存度9割弱 金融機関の支援で「延命」されていた長野県有数の中小企業がたどった末路:あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(8)(5/5 ページ)
成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。
負債の9割近くが借入金
申請時の負債は、債権者約133人に対し約35億8500万円。長野県内の倒産としては有数の倒産となり、製造業者に限ると負債30億円以上の倒産は約6年ぶりとなった。
負債総額のうち、メインのメガバンクのほか政府系金融機関、地銀、信用金庫など6行庫が持つ債権は約31億100万円に達し、全体の86.5%を占めた。ダイナテックの借り入れ依存度の高さ、そして借入金返済が長年にわたり猶予されてきたからこそ、経営を維持できたことを物語っている。
もっと早い段階で民事再生などの法的整理、あるいは再生支援機関の支援を仰ぐといった「抜本的な再建」に移行する選択肢はなかったのだろうか。
こうした声に対し、ある関係者は「技術・設備面からみても、再生を進めるにあたって強みを発揮できるような核となる事業がなく、仮に大幅な債権カットがあったとしても、実効性の高い再建計画を策定するのは難しかったのではないか」と口にする。
一方、ここ数年で急速に業績悪化したため、対応が後手に回った可能性があると指摘する債権者もいた。確かにリーマン・ショック、市場の変化、中国事業の不振、東日本大震災と矢継ぎ早に逆風が吹き、減少する売り上げと膨大な借入金のバランスが大きく崩れたために、具体的な再建策を見いだしづらかったという事情はあるかもしれない。
金融機関などの支援を受けながら、経営改善を図っている企業は依然として多いが、その道筋が見いだせずにいる企業も決して少なくない。ダイナテックの倒産は、市場予測や経営判断、そして業績悪化からの再建・経営改善の難しさを示す事例となった。
著者プロフィール
帝国データバンク 情報部
1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。
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