なぜ日本企業は「セコい不正」をやらかすのか:スピン経済の歩き方(1/4 ページ)
日本企業のセコい不正が後を絶たない。品質検査データをイジったり、燃費データを補正したり、最近はそのセコい手口が消費者まで拡大されている。その背景に何があるのか。スゴ腕弁護士が分析したところ……。
日本企業のセコい不正が後を絶たない。
数年前から、日本の「ものづくり企業」で、納期を守るために品質検査データをイジる、カタログに記載している数字に合わせるために燃費データを補正する、という「帳尻合わせ型不正」が次々と明らかになっているのはご存じの通りだが、最近そのセコい手口が消費者まで拡大されている。
郵便局のブランドを悪用して、ロクな説明もしないで簡易保険を売りつけたり、テレビCMをバンバン流す有名企業が、土地持ちのシニアに「家賃収入でウハウハですよ」とウマイ話を持ちかけて壁がペラペラの「違法アパート」をつくらせたり、と高齢者を狙う詐欺グループのようになっているのだ。そのあまりの多さは、もはや「大多数の善良な人間の中に、ちょっぴり悪い奴が紛れ込んでいました」と擁護(ようご)できるレベルではない。
では、いったいなぜ「世界一マジメで勤勉」なんて評されることの多い日本のサラリーマンたちが、小学生でも善悪の区別がつくようなセコい悪事に手を染めてしまうのか。
「それは、彼らがマジメなサラリーマンだからでしょうね。日本社会は個人の良心が独立しにくいので、組織に属するサラリーマンは会社の売り上げを上げるためなら、とにかくその場しのぎのうそや不正に走ってしまう。私はこれを『今だけ、カネだけ、自分の会社だけ』と呼んでいます。そのような意味では昨今の企業不祥事は、“サラリーマン犯罪”と言ってもいい」
そう語るのは、弁護士の河合弘之氏。その名を聞いてピンと来た方も多いのではないか。
ダグラス・グラマン事件、平和相互銀行事件、イトマンVS. 慶屋事件、つぼ八事件、秀和・忠実屋・いなげや事件、武富士事件、KSD事件、イ・アイ・イ事件などバブル期に注目を集めた大型経済事件の弁護を引き受け、そのほとんどで大方の予想を裏切って勝利をおさめ、ホテルニュージャパン火災で知られる横井英樹氏、ダイエー中内功氏などバブル紳士たちの顧問を務めた超スゴ腕の企業弁護士である。
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