起業、パラレルキャリア、はたまた奴隷? 「個の時代」、人生ゲームの勝者は誰だ:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」in 沖縄(2/3 ページ)
終身雇用や年功序列といった日本的経営に陰りが見え始める中、「会社に頼らない生き方」をするためにはどんなキャリア設計をすればいいのか――。働き方改革の先駆者たちに聞いた。
給与は、評価ではなく洗脳
長谷川: 一方、シンジ(クラウドネイティブの齊藤愼仁氏)みたいに起業するケースもあるよね。シンジが2年前に立ち上げたクラウドネイティブは、あえてIT素人を雇って一人前のITコンサルタントに育てたり、社員が自分の給与を自分で決める「雰囲気給与」の形をとっていたり、ちょっと変わってるよね。
齊藤: IT素人を一から教育するというのは、前職の情シス時代から続けているやり方です。まっさらな状態だから、必要な知識やスキルを一生懸命吸収しようとしてくれるんですよ。
長谷川: でも、IT素人なら誰でも良いわけではないでしょう。どんな基準で採用しているの?
齊藤: どんなことでもいいので、“ガチ”で取り組んだ経験があるかどうか。惰性やちょっとした好奇心ではなく、とことん本気になって物事に取り組めるかどうか。それから、周囲がサポートしてあげたくなるような人かどうかかな。一から教育するわけですから、学ぶ意欲のない人、周囲との壁を作る人だと、教えたいとは思えないですよね。
小島: 「雰囲気給与」というのはどういう制度なの?
齊藤: 1カ月の仕事を自己評価して、全社共有のスプレッドシートに欲しい金額を入れていくというものです。だから、全社員がお互いの給与を知っています。
小島: それはすごいね。自分で給与を決めることで、仕事を自分事化できるとか、そういう狙い?
齊藤: いや、単に、評価やそれに応じた給与額を考えるのが面倒くさいんですよ。自分のこともよく分からないのに、他人の評価なんかできるわけがないと思っているので。だから、社員が欲しがる分だけ全部払おうと思ったんです。最初の3〜4カ月はキャッシュがなかったので、カードローンを組みまくり、借金しまくって払いました。
喜多羅: 欲しい分だけ記入するという方法だと、どんどん給与が上がってしまうのではと思ったけど、みんなが見ているシートに記入するわけだから、自分と周囲の働きを客観的に見て、自浄作用が働くんだね。
齊藤: 逆に、自分のほうが働いているのに、先輩が今月40万円と書いているから遠慮して38万円と書いてしまうケースもあるんですよ。でも、周りがそれを察して言うんです。「何でお前こんなに貢献しているのにその金額なの?」って。
僕は、給与って評価じゃなくて洗脳だと思ってるんですよ。会社の状態や人間関係で、高くなくても頑張っちゃうところがある。だから、いくらが適正金額なのかは分からない。本人が納得できるかどうかだけで金額を決めても良いと思う。
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