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マザーハウス社長の山口絵理子が語る経営哲学――対立を越えて「よりよい解」を生み出す「サードウェイ」とは(5/5 ページ)

マザーハウスの創設者である山口氏がこの夏、初の「ビジネス書」を刊行した。タイトルは「Third Way 第3の道のつくり方」。マザーハウス創業のきっかけにもなった同氏の経営哲学は、どのようなものなのか――。東京・六本木のアカデミーヒルズで行われた講演の内容を紹介する。

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日常の問題を「サードウェイ」に落とし込む方法

 最後に、大事な心構えとして、皆さんにお伝えしたいことがあります。まず、日常生活の中でどんなふうにサードウェイを落とし込めばいいのか――。ここで大事なのは、相反する出来事の中から「いい部分を見よう」ということです。

 サードウェイの根っこにあるのは「ポジティブにものごとを見る」ということで、これがなければ、サードウェイは成り立たちません。

 例えば、手仕事をする人たちは、大量生産工場のことをすごく批判するんです。大量生産の人たちも「手仕事なんて」と批判する。でも、批判しているだけでは何も進まないんですよね。「向こう側にいる人って、どこがいいところなのかな」とイメージしてみることが第一歩だと思います。

 ただ、イメージするところまでは行けても、実際にかけ算するのは難しい作業だと思うんです。実際のところ私も、対立軸の真ん中に「マザーハウス」と書けるまでには、相当、右往左往したんです。

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 例えば私は昔、三井物産のダッカ事務所で働いていたことがあって、その時に「このまま商社に入って、途上国でものづくりができたらいいんじゃないか」とか「自分でボランティアやNGOを立ち上げて、そこでものづくりをしたらいいんじゃないか」とか、考えたりしていたんです。

 それがあるとき、「マザーハウス」というサードウェイにつながったのは、「現場あってこそ」なんですね。現場に行かずにPCの前で悩んでいても、たぶん、かけ算はできない。「現場に行って、汗をかきながら頭を動かす」ことが、すごく大事なんです。現場からヒントを得ながら、実際にさまざまなかけ算の要素を書いてみたり言ってみたりして、それがよかったらアクションに落とし込んでみる。出来上がった選択肢がたとえダメだったとしても、「改善していこうよ」――という「キープウオーキング」のスタンスがとても重要なのだと思います。

 私は今でも、マザーハウスという会社の経営体制や製造販売の仕組みは、正解だとは思っていなくて、毎年、振り子のように揺れながら、だんだん精緻になっていけばいいじゃないか、と思っているんです。

 たとえ今の選択肢がうまくいかなくても、粘り強く改善し続けていく姿そのものが「サードウェイ」であり、あとで振り返ってみたら、「そういう道ができていた」――ということが理想なのではないかと思っています。

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講演の様子は中尾仁士氏がグラフィックレコーディングしてまとめている
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Q&Aの「社会の幸せとスタッフの幸せ」に関する質問では、山口氏が感極まって涙ぐむ場面も
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