それでもオンラインサロンが受ける理由――「デジタル選民ビジネス」という甘いワナ:有名人サロンやN国も踏襲(2/3 ページ)
有名実業家やタレントなどが主催するオンラインサロンがいまだに盛況だ。筆者はその裏に「デジタル選民意識」の利用があるとみる。あの「N国」も巧みに操るそのビジネスモデルとは?
「党首が嫌われキャラ」で成功したN国
サロンオーナーがいわゆる(世間的にネット炎上を招きやすいなどの)「嫌われキャラ」、新規事業を起こす、本を売るなどの「分かりやすい物語」、その物語を腐(くさ)す「外敵の存在(コミュニティーの外部にいる無責任な批判者)」です。
意外に思われるかもしれませんが、これらオンラインサロンの特徴を備えており、なおかつその先を行っているのがNHKから国民を守る党(N国党)です。N国党は「炎上商法」で雪だるま式に支持者を増やし、マスコミを中心にバッシングが止まりませんが、その集客手法的な部分にだけ目を向けると非常によくできたコミュニティーです。
党首の立花孝志氏が「嫌われキャラ」を見事に演じ切り、「NHKをぶっ壊す」=既得権益層に対する「一揆」という「分かりやすい物語」を引っ提げ、マスコミを始めとする強力な「外敵の存在」が立ちはだかります。実際、外部から攻撃されればされるほど支持者の結束は強くなり、むしろ「世間に恨みや不信感のある層」が群がり、長期戦にも耐えられそうなコアなファンを獲得しています。
ここで重要なポイントになるのは、「物語に真実味を与える困難」と「直接参加の機会」です。
キングコング西野氏「あえて負けやピンチ作る」
キングコングの西野亮廣氏は、オンラインサロンの将来像をどう考えるかと聞かれてこう答えています。
「これまでは世間的に知られている人の声が大きかったですが、今後はファンを持っている人が強くなると思います。自分のファンをいかにつくるかという点で、大事なのは物語です。僕のオンラインサロンでも、うまくいこうが失敗しようが、挑戦している時に会員が増えます。漫画やドラマと一緒で、1回上がって、ピンチや失敗があって下がって、底から再起する。このN字形を自分の人生でもやらないといけません。完璧な事業計画書を作っても、あまりファンは生まれません。あえて負けやピンチをつくることも大切なんです」(「福井新聞ONLINE」8月17日)
ここで言及している「あえて負けや失敗をつくること」は、極論を言ってしまえば「自作自演」でも構わないということです。リアリティー番組がやらせに満ち満ちていることを知っていても、少しも人気が衰えないことからもそれは裏付けられています。
N国党の場合、負けやピンチがどの程度計画されたものかがうかがいしれません。高度なプロレスを観劇しているかのような迫真性があるからこそ、「真実味」というスパイスが入ったエンターテインメントとしての強度が生じます。西野氏の言葉を借りれば、今回の立花氏の書類送検の件といい、「N字形」をガチンコで突き進んでいるのです。そして、ほぼ同時期に立花氏のYouTubeのチャンネル登録者数は50万人を超えました。着実にファンが増えているのです。
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