ポイントは収入目当てではない副業希望者を呼び込むこと
これを聞き、銚子市や銚子信金も副業人材の活用に向けて動き出した。商工会議所もこれに続く予定だ。
銚子信金 常務理事の飯島良春さんによると、地元企業の大きな課題である人材難の内容は、大きく2つに分かれている。
1つは、現業を回していくための労働力が足りないという意味での人手不足。もう1つは、さらなる成長のためのイノベーションを起こせる人材がいないという能力不足だ。都会から来る副業人材が担えるのは、後者の能力不足を補う役割だろう。
市の担当者も、副業人材が新たな発想を持ち込み、本業のスキルや経験を生かして新規事業開発に伴走してくれることを期待している。いま、経営者の高齢化に伴って廃業という道を選ぶ企業が増えている。新規事業で活性化すれば、会社を存続させようという機運が高まり、廃業を止められるのではないかと考えているのだ。
しかし、当事者である中小企業は、そこまで課題認識ができていない場合も多い。銚子信金 営業推進部副部長の高木益伸さん(※「高」ははしごだか)さんは、「そこに気づいていただき、『それなら、Skill Shiftでこういう人材が呼んで来られますよ』とフォローするのがわれわれの役割」と語る。
月に3万、5万という報酬での募集に、それほど優秀な人が来るのか、という疑問もあるだろう。銚子市でも、最初は「誰も来ないでしょ」という見方がほとんどだった。それでも5社ほどがSkill Shiftに募集を掲載してみると、どんどん応募があって驚いているところだという。銚子スポーツタウンの場合もそうだが、Skill Shiftの登録者の多くは、収入目的で副業先を探しているのではないようだ。
Skill Shiftの責任者を務めるスキルシフトの鈴木秀逸さんによれば、応募者の動機は「案件にもよるが、自分のスキルを試したいという人が3割、地域活性化や社会課題の解決に貢献したい人が3割、その地域への愛着や自分の楽しみのためという人が3割くらい」とのこと。転職先を選ぶのとはまったく違うロジックで副業先を選んでいるという。
もちろん、世の中全体を見ればこのような人たちは一部にすぎない。2018年に実施された正社員を対象とする調査では、副業・兼業をしたい理由として最も多いのは、「収入を増やしたいから」(85.1%)だった(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査・労働者調査)」より)。
裏を返せば、地方の中小企業が都会の副業人材の力を借りるときは、その動機を見誤らないようにすることが重要だということだ。
お金ではなく、自己実現や社会貢献、人とのつながりに期待してやってくる人がもたらすもの――。それは高いお金を出して雇う人のそれとは違ったものになるだろう。その効果は未知数だが、今までにない化学反応が起きることに期待したい。
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