クルマの「つながる」が分からない:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
「コネクティッドカー」つまりつながるクルマとは何かを、明瞭にスパッと説明できる人はほとんどいない。それはなぜか。音声認識を使って音楽を流せるというようなエンターテインメント要素の話と、車車間通信、車路間通信を使って安全性を向上させようという骨太の話が、混ざって語られるところに混乱の元がある。
次元の違う2つの階層
さて、では全体図にもう一度戻ろう。そもそもコネクティッドの一丁目一番地は安全だ。そこに向かう技術の代表は当然ながら自動運転である。自動運転になったら事故が撲滅できるかといえばそうはならないだろうが、少なくともヒューマンエラーは排除できる。
交通死亡事故のピークは、第一次交通戦争といわれた1970年の1万6765人、第二次交通戦争といわれた92年の1万1452人だ。17年にはこれが3694人にまで減った。従来のやり方でこれ以上減らすには限度があり、抜本的なやり方の変更が必要だ。それがヒューマンエラーの排除を目的とした自動運転ということだ。
クラウドサーバとクルマをつないで高速処理を行うためには、5G(第5世代移動通信システム)が必須だ。しかし5Gといっても、4Gの拡張版である簡易型と、本格的な高速大容量を確立する本来の規格の両方があるのだという。そして本格型の5Gのインフラ整備にはだいぶ時間がかかりそうなのだ。
しかしながらクルマの「つながる」が目指す本来の目的は、5Gに支えられた自動運転にある。トヨタはDCMをアライアンス各社に普及させて、ビッグデータを収集しつつ、バーチャルに自動運転の開発を進めようとしていると筆者は考えている。
そして、こういう真面目な話だけでは普及が進まなかったというITSの反省を活かして、スマホ機能がクルマで使えるという分かりやすいメリットをユーザーに提供しているのだと思う。つまり、「つながる」話はこのDCM領域の骨太の話と、新しモノ好きに訴求するエンタメ領域の話が別階層でそれぞれ走っているので分かりにくいのだ。
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