米中貿易摩擦の本質は何か? “気分”には影響しても、米経済のトレンドには影響せず 日興アセット神山氏(2/2 ページ)
制裁関税などの交渉の行方ばかりがニュースとして注目されるが、そもそも何が米中の”摩擦”なのか。批判の対象は、中国の知的財産権保護の不十分さ、国営企業優遇による競争排除、補助金によるダンピング支援だ。米国は中国にこれらの問題の解決を要求してきたが、トランプ大統領は実際に追加関税というアクションを取ったところが新しい。
米国経済のトレンドに、米中貿易摩擦はあまり影響していない
こうした背景の中、米中貿易摩擦は基本的に米国経済のトレンドにあまり影響していないと神山氏は分析している。「何でも貿易摩擦のせいにしがちだが、米国経済はサイクルが緩んでいるところ。米政権は(経済を)壊さないように丁寧にやっている。実際、データを見ると経済は壊れていない。壊れているのはサーベイ、アンケート、センチメントだ」
米国経済のトレンドを長期的に見ると、まず雇用が増えている。リーマンショックの落ち込み後、2014年5月頃にはリーマンショック以前の状態に戻り、そこから上昇が続いてきた。そして、時間あたり賃金も上昇してきた。その結果、米国の小売売上高も堅調だ。
「雇用が増えた、そして賃金が上がったので小売売上が上がる。需要総量が増えている。これが加速したのが2016年くらいから。直近は、前年同月比で見ると後退しているが、水準そのものは下がっていない」
需要が増加しているため、米国の輸入額も高止まりしている。「18年3月ごろから関税が上がった。関税が上がっても輸入が大きく減っていない。これが、貿易摩擦が経済のデータには影響を与えていないという意味だ」
関税は上げたが、トランプ政権は法人税減税を実施済み。そして全体としては財政政策は緩和的だ。全体として、「消費が順調で、設備投資が順調なら、GDPの成長率はネガティブにならない」
ただし「(景気後退)懸念があるから設備投資をしないという話は強くなっていきそうだ。それでも米政府が、GDPへのインパクトの極小化しようとしている姿勢は続くだろう」
関連記事
- 株式、債券、不動産。全資産が上昇する中、市場をどう見るか?
主要な資産がすべて上昇するなか、今後の市場をどう見るか。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストに聞いた。 - なぜ利回りがマイナスの日本国債が買われるのか?
現在、金利だけでなく、日本国債の利回りもマイナスだ。つまり、買って利息を受け取っても、満期まで持つと損失が出る。なぜこのような債券が売れるのか。背景には、為替ヘッジとベンチマーク運用があった。アクサ・インベストメント・マネージャーズの債券ストラテジスト、木村龍太郎氏に聞いた。 - 貿易摩擦で経済リスク、政府内に消費増税慎重論が浮上
米中や米欧間で生じつつある貿易摩擦が、日本の財政運営判断に大きな影響を与えそうな雲行きになってきた。 - 短観、6月は製造業景況感2期連続悪化、貿易摩擦は影響うかがえず
日銀短観によると、大企業・製造業の業況判断DIは前回比3ポイント低下した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.