セブン「1000店閉店、移転」はドミナント戦略の限界か:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
セブン-イレブンが2019年下期以降、1000店舗を閉店・移転すると発表した。街中にコンビニがあふれているので、「そりゃあそうだろう。ちょっと減らしたほうがいいよ」と思われたもしれないが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。それは……。
ドミナント戦略からスパッと手を切って
以上のことを踏まえると、セブン-イレブンという組織やビジネスモデルを根底から崩壊させるような「危機」がすぐ側まで近付いているとしか、筆者には思えないのだ。これを回避するには、その場しのぎの対症療法ではなく、現場を疲弊させている根本的な原因に手を突っ込むしかない。そう、ドミナント戦略である。
30年前の人口増社会の中で確立された「店の数を増やせば増やすほど売り上げが上がる」というドミナント戦略が、人口減少社会で一気にマイナス方向へ働いてしまっているのは明らかだ。
これは例えるなら、下りエスカレーターに乗っているにもかかわらず、その動きに逆らって必死に上の階に駆け上がっているような状態である。「やれ」と言うほうはラクだが、実際にやらされる側からすれば、終わりのない拷問のようなものだ。
窮鼠猫をかむではないが、組織に追いつめられた人間は、組織が想定していないようなすさまじい反撃をするものだ。
取り返しのつかない「危機」が起きてしまうその前に、永松社長にはぜひドミナント戦略からスパッと手を切って、人口減少社会に見合う、適切なコンビニ数へと統廃合を進めていただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
関連記事
- ちょっと前までチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が、減速した理由
ブームの牽引役などとチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が叩かれている。2018年12月決算は、8年ぶりに赤字。低迷の原因として、米国での閉店や類似店舗の増加などが指摘されているが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。それは……。 - 「日本経済が成長しないのは、中小企業が多いから」は本当か
少子化に歯止めがかからない。出生数は90万人割れが確実となっていて、これは推計よりも早いペースだという。このままだと日本経済がさらに悪くなりそうだが、“治療法”はあるのだろうか。筆者の窪田氏は「中小企業改革」を挙げていて……。 - 50年前から分かっていた少子高齢化問題、なぜ回避できなかったのか
「敬老の日」の昨日、この国の「敬老」の意味をあらためて考えさせられるニュースがあった。65歳以上の高齢者は約3588万人で、全人口に占める割合は28.4%と過去最高となり、これは同じく高齢化が進むイタリアの23%を大きく引き離し、世界一となっているというのだ。 - 「韓国人観光客激減」は長い目で見れば、日本のためになる理由
日韓の政治バトルによる「嫌日」の高まりから、韓国人観光客が激減している。このような事態を受け、一部の観光地から「早く仲直りしてくれないと困る」といった悲鳴が上がっているが、筆者の窪田氏はどのように見ているのか。長い目で見れば……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 「世界一真面目な労働者は日本人」と触れ回っては、いけない理由
またしても日本の「働き方」のクレイジーさを物語る残念なデータが出てきてしまった。日本を含むアジア太平洋地域14の国・地域を対象にした就労実態調査(パーソル総合研究所調べ)を見て、筆者の窪田氏はどのように感じたのかというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.