ディーカレットの「日本円」版リブラ計画 狙いを時田社長に聞く(3/3 ページ)
価格変動が大きく決済に利用できないといわれる仮想通貨に対し、法定通貨を裏付けとして持つことで価格を安定させるステーブルコイン。Libraをはじめ、その可能性が注目されている。国内でも、円建てのステーブルコインを計画している、仮想通貨取引所のディーカレット。同社の時田一広社長に、その狙いを聞いた。
ーーブロクチェーン運営には、誰でも承認機能を担えるビットコインのようなパブリックブロックチェーンと、承認者を限定するプライベートブロックチェーンがある。現在考えている運営のイメージは?
Libraがそうであるように、現時点ではパブリックでやるのは非常に難しい。決済のスピードの問題もあるし、誰かに承認を依存することも考えにくい。ビットコインのような、マイナーが承認を担うやり方は難しい。特定のところで承認を担うのが、安全性も含めて現実的だ。
最終的には、広く分散して、それが公平、公正なものであるために、パブリック化していくべきだという考えはある。公共性が金融サービスであるステーブルコインでは問われてくる。公共性という話になれば、そういう流れになっていく。
ーー円建てステーブルコインは、コストが高く時間もかかることが課題になっている海外送金の解決策になり得るのか?
円のステーブルコインは国内の利用に限られると思う。ただし、このタイプのモデルがうまくいけば、海外でも同じようなモデルを推進してもいいし、海外の業者と連携してもいい。日本にいる人が相手の国に対して送りたいとき、こちらでは日本円だが、受け取る側は米ドルのステーブルコインで受け取りたい。そのとき、これを交換して送ってあげる機能があればいい。
いまの我々のサービスに円のステーブルコインを追加できれば、ビットコインやイーサリアム、リップルと並んで扱うことになる。ここにUSドル、ユーロなどのステーブルコインを追加できれば、交換して送ることもできるようになる。
日本円のステーブルコインが実現できれば、一つ方法が確立する。同じ方法でやれば、主要な通貨(のステーブルコイン)にも対応できるのではないか。
ーーすべての取引がブロックチェーンに記録されることで、透明性が高まる一方で、プライバシーの問題も出てくる。
かなり大事なポイント。技術的にはトレースできるし分析もできる。プライバシーはきちんと保護しなくてはならない。かたや、マネーロンダリングや脱税など、不正をする人への防御策にもなる。デジタル通貨にすると問題が起きるんじゃないかという有識者もいるが、反対の意見として、デジタル化してしまったほうが不正はしづらいという事実もある。
どこまでのトレースが公平性で、どこからがプライバシーの侵害なのかは一つ一つのユースケースで変わってくる。記録されることそのものは、時代の方向だ。ネットの支配者のような企業がたくさんの情報を持っているという事実もあり、だからきちんと情報を保護しなさいという圧力がかかっている。それと同じで、ステーブルコインのようにトレースできる通貨を扱う人には規制が必要になるだろう。
情報をしっかりコントロールする必要がある。取引した当事者は取引相手が誰か見ていいが、そうでない人は、誰と誰がどんな取引をしたのか見えてはいけない。内容をマスクして公開することになるだろう。
ブロックチェーン技術の先にあるのは情報のコントロール。ここまでいくと、特定の人が支配せずに公平に情報を扱える社会になる。
ーー円建てステーブルコインの実現に向けてのロードマップは?
もともとのビジネスプランでは5年はかかると見ていた。だから5年間のビジネスプランには、ステーブルコインの収益計画は入れていない。普及の道筋をつけるのに5年くらいはかかるだろう。法律もそうだし、みんなに使ってもらわなければならないからだ。
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