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ANA社員が「女子高生バレーチーム」の監督に!? 謎の人材育成プログラム「文武両道場」に潜入人気の強制「修羅場」道場に密着【前編】(1/4 ページ)

企業から派遣された受講生が2日間にわたってバレーボールチームを監督として率い、マネジメント能力を高める「文武両道場」という人材育成プログラムがある。全日本空輸(ANA)やそのグループ会社、横河レンタ・リース、日本財団、茨城県などの社員や職員が参加したこのプログラムに密着した。参加企業の狙いはどこにあるのか?

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 8月、東京・代々木にある国立オリンピック記念青少年総合センターの体育館で、バレーボールの試合が行われていた。参加しているのは高校生と大学生、いずれも女子の選手たちだ。

 普通の試合と様子が違うのは、各学校の選手が混じり合った混成チームになっていること、そして指揮を執っているのが部活動の指導者ではないことだ。6チームのうち4チームの監督は、一般企業の社会人。残り2チームは監督不在で戦っている。

 実はこれ、「文武両道場」と銘打たれた企業が参加する「人材育成プログラム」の一場面である。企業から派遣された受講生が2日間にわたってバレーボールチームを監督として率い、その経験を通してマネジメント能力を高める狙いがある。この日は全日本空輸(ANA)やそのグループ会社、横河レンタ・リース、日本財団、茨城県などの社員や職員7人が参加していた。

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女子高生と女子大生の選手が混じり合った混成チームの指揮を執っているのはANAなど一般企業の社員。会場には選手たちの掛け声と、ボールが床にぶつかる「ドンッ!」という音が響き渡っていた

 主催する株式会社Waisportsジャパン(東京都目黒区)の松田裕雄代表は言う。

 「会社では、自分が専門としてこなかった部署の管理職に任命されることもある。部下のほうが専門知識や技術、情報を持っているなかで、その職場の生産性をどうすれば上げていくことができるのか。そうした問題意識が根底にあって、4年前からこのプログラムをスタートさせました。受講生はほとんどがバレーの未経験者ですから、バレーのことを何も分からない状態でチームを指揮しなくてはなりません」

 松田さんはもともとスポーツコーチングを専門とする筑波大学の教員だった。産学連携型の研究にも取り組んでいると、「人材育成に課題を抱えている」との声が企業サイドからしばしば聞かれた。それならばと、スポーツを活用した人材育成プログラムの設計と事業化に着手したのだ。

 数あるスポーツの中からバレーボールを選んだのには理由がある。

 「ぼく自身が経験者ということもありますが、バレーの環境はこのプログラムにすごく適しているんです。まず、コートがコンパクトで人口密度が極めて高く、全体が見渡しやすい。それにトスをつないでいく必要があるので、特定の個人のスタンドプレーが起こらない。

 要は、人間関係やチームワークが非常に重要になるスポーツで、それはビジネスの現場に近い環境と言えます。それからポイントが全てラリーポイント制によるセットプレーで生まれるため得失点1点1点における因果関係が分かりやすく、ゲーム全体を通して何がよくて何がいけなかったのか、その原因と結果の分析がしやすいという特徴があります」

 女子チームを対象としているのも、「ノリでなんとかなる」男子に比べて女子は心をつかむのが難しく、マネジメント能力を要求される場面がより多いからだという。

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Waisportsジャパンの松田裕雄代表

 ANAで人事の責任者を務める常務の國分裕之さんは研修に参加した狙いを語る。

 「今後の活躍に期待するマネジャークラスの人材を対象にしています。選抜研修のような形で活用していて、社内の研修で学んできたことや、職場で起こしてほしい行動を、日常の業務から離れて集中的に実践する場として位置づけています。職場ではどうしても実業務が第一優先になりますし、私たちの目も届きませんから貴重な機会と考えています」

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ANA常務の國分裕之さん
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女子高生、女子大生の混合チームの監督を各社の社員が務め、「ガチンコの勝負」を繰り広げていた
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