「楽しくない職場」には人材が集まらない
最近、若手社会人の人生観・仕事観が、これまでの会社中心から個人中心へとシフトしてきているといわれています。これからは、「自分の人生の充実」につながらないと感じる職場に人は集まりません。
一方、楽しく仕事に取り組む人が集まる職場は、過剰な管理が必要なくなり、自律分散的組織運営で回るようになります。人は管理されるときよりも、自分で考えて動くときの方が、高いエネルギーを発揮します。
そういう組織は、一人ひとりが仕事の意味や目的を明確に意識しているため、ムダな仕事はせずに、成果や目標につながる仕事にフォーカスし、高い生産性を実現します。また、社員が生き生きと楽しくはたらき、成果を上げているような会社は、社会から厚い信頼を得ることができ、ブランドという無形の財産を蓄積することができます。
仕事で高い成果を上げるためには、チームワークが重要です。しかし、私たちはまずはじめに「個人の自立と幸福」をしっかりと確立し、その上で自立した多様な個がチームを組む方がうまくいくと考えています。なぜならば、日本のような同質な、周囲の目を気にする社会では、先にチームワークを強調すると、個が集団の規範やしがらみの中に埋没しやすいからです。
多様な個が集まるチームでは、メンバーは「チームの目的」のもとに集い、自分の得意な分野でチームに貢献します。不得意なことを無理にやってもらうようなことはしません。それぞれの参加スタンスや貢献の仕方が違って良いのです。また、メンバー同士が、心理的安全性を感じることができるような、信頼関係のある人間関係で結ばれていることも重要です。
経営層がやるべきことは「環境作り」
さて、これまで述べてきたようなことを実現していくためには、「環境づくり」が重要です。いくら自律的に動けるメンバーがいても、組織環境がそれを許さない場合、個人は力を発揮できず、じきに辞めてしまうでしょう。また、現時点でそれほど自立していないメンバーがいたとしても、組織環境や周囲のメンバーが背中を押すことで、自立へ向けて進んでいくことができます。
環境とは具体的には、「マネジメントスタイル」「仕組み」「企業文化」などです。これらが「個の自立と幸福」を後押しするようなものであることが望ましいのです。
例えば、スコラ・コンサルトの組織環境は、完全にフラットな組織で、上司も部下もなく、全ての社員が自分の判断で動く「ティール組織」のような組織運営をしています。各メンバーが自分の責任を明らかにして、仲間と協力して、自律的に課題に取り組んでいます。このような環境が組織メンバーの自発性や創意を引き出しています。
環境づくりの中で、仕組みづくりもとても重要です。サイボウズでは、ITシステムを活用し、膨大な情報を共有し、また、対面で話しあう「場」も重視するなど、バーチャル・リアルの両面から、さまざまな仕組みを構築し、チームのコミュニケーションを深めることを促進しています(具体的な取り組みは、次回以降の連載で紹介します)。このような環境づくりにおいては、トップや経営のサポートは欠かせません。
「楽しい」を増幅する会社について概要を述べてきましたが、いかがでしたでしょうか。まだまだ現実離れしていると感じた方もいらっしゃるかもしれません。組織の在り方に正解はありませんので、みなさまの組織でも、自分たちの手で、ありたい組織づくりを進めていかれることを願っています。
次回からは、より具体的にテーマを絞り、事例なども交えて、「楽しい」が増幅する会社づくりについて紹介していきます。
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