政府の”キャッシュレス推進”ウラの狙い 改善したい“不名誉すぎる”実態とは?:新連載・古田拓也「今更聞けない金融ビジネスの基礎」(1/2 ページ)
消費税増税からまもなく1カ月を迎え、キャッシュレスへの関心の高まりが顕在化してきた。政府が”身銭を切って”までキャッシュレス決済を推進するのは、異例とも思われる措置だ。その背景を理解するには、巷(ちまた)で言及されているような「インバウンド需要」や「脱税防止」以外にも押さえておかなければならない重要なポイントがある。それは、アンチ・マネーロンダリングだ。
消費税増税からまもなく1カ月を迎え、キャッシュレスへの関心の高まりが顕在化してきた。9月30日における「消費税」の検索ボリュームを100として、「キャッシュレス」「PayPay」といった検索キーワードとの対比を示したグラフを見ると、それがよく分かる。
増税当日の10月1日には、「キャッシュレス」の検索ボリュームが相対的に高まった。増税を機に「消費税」は増税2カ月前の水準まで下落しているが、「キャッシュレス」や「PayPay」といったキーワードは依然として増税前の水準を維持しているようだ。
キャッシュレス関連のキーワードにおける検索ボリュームが高まった背景としては、政府主導のキャッシュレス還元事業の存在が大きいだろう。この事業は、消費者がキャッシュレス決済で購入した金額のうち、最大5%分のポイントをキャッシュバックする国の補助制度だ。コンビニや近所のスーパーのレシートを確認すれば「キャッシュレス還元額」といった項目で、値引きかポイントの還元結果が記されていることだろう。
このポイント還元事業は消費者だけではなく、店舗としてもメリットが大きい。なぜなら、キャッシュレス決済にかかる手数料の30%を肩代わりしてくれるからだ。経済産業省が2018年に公表した「キャッシュレス・ビジョン」において、事業者にとって参入障壁の1つだった店舗のコスト問題について呼応した形となる。
20年6月までの時限措置とはいえ、政府が“身銭を切って”までキャッシュレス決済を推進するのは、異例とも思われる措置だ。その背景を理解するには、巷(ちまた)で言及されているような「インバウンド需要」や「脱税防止」以外にも押さえておかなければならない重要なポイントがある。それは、アンチ・マネーロンダリングだ。
関連記事
- 黒いアドレスを追え 流出仮想通貨の追跡はこう行われる
過去2年間で、世界中の取引所から1200億円近くの仮想通貨が盗まれている。盗まれた仮想通貨は、資金洗浄されて犯罪組織の資金源となる。これをいかに防ぐか。元Bitflyerのメンバーが立ち上げたBassetは、仮想通貨の送金の流れを明らかにし、犯罪者のアドレスを推論するツールの開発を進めている。 - 仮想通貨の匿名取引を実質禁止に? 台湾でマネロン防止法など改正
台湾の立法院は11月2日、マネーロンダリング防止法やテロ資金防止法の改正案を可決。その内容にはビットコインなどの仮想通貨における金融犯罪対策も含まれる。FOCUS TAIWANが報じた。 - 「明日からキャッシュレスポイント還元開始」菅原経産相がPR
経済産業省は「キャッシュレス・ポイント還元事業 開始宣言」と銘打った発表会を開催。10月1日からの還元事業の利用促進に意欲を示した。 - エストニアが「電子国家」に生まれ変わった本当の理由
5月に行政手続きを電子申請化する「デジタルファースト法」が成立した。マイナンバー制度のロールモデルであるエストニアはなぜ電子政府の仕組みを進めたのか。「e-Residency」(電子居住権制度)公式パートナーであるEstLynxのポール・ハッラステCEOに話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.