「持続可能なゲームメディア」の未来像とは 電ファミニコゲーマー・平編集長を直撃:ドワンゴから独立(4/4 ページ)
ゲーム情報サイト「電ファミニコゲーマー」が運営元であるドワンゴから独立するというニュースは話題になった。日本でも指折りのゲーム報道媒体として親しまれてきた同サイトだが、Webメディアとしてどうマネタイズできるかを模索している。ゲームニュースの一線に身を置き続けてきた平信一氏に、描くメディアの未来像について直撃した。
課題も多々あるオンラインサロン
――現在、世界征服大作戦は電ファミの「ファンクラブ」という形で、月額の会費に合わせ有名業界人とのチャットや、鳥嶋さんのようなコンテンツ業界の大物を呼んだオフラインのイベント参加ができる仕組みです。オンラインサロンは取り組むメディアが多い半面、課題も多いそうですね。
平: まず、(当初は)ターゲットが分かりづらかったかなと思っています。読者に向いた取り組みなのか、業界人向けなのかフワッとしていました。当面はゲームやアニメといった業界に寄り切ってしまおうと考えています。
例えば、鳥嶋さんの漫画講座をやってみるなど、一般向けというよりはプロ仕様でやろうと思っています。「広く浅く」よりは「深く刺さる」ように。何かの勉強会でもいいのですが、深く特定の人に刺さることで、その影響や知り合った人同士の縁で、何かのプロジェクトが始まるといったイメージ。僕や鳥嶋さんのやりたかったのはそういうことです。
サロンそのもの(が生み出す)かは分かりませんが、電ファミやマレのイベントをきっかけに新しいサービスやIPが生まれればいいな、と思っています。
ファンクラブ「世界征服大作戦」の有料会員向けに行われた、『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)の作者である羽賀翔一氏(左)と白泉社の鳥嶋会長の対談。漫画とは一体何なのか、羽賀氏がこれからどのような展望を持って漫画家として生き抜いていけばいいのかといった真剣な議論が交わされた(写真はマレ提供)
――ただ、鳥嶋さんのような著名人の知見を発信するだけなら、記事や動画コンテンツでいい気もします。わざわざイベントにするメリットとは?
平: (著名人の仕事場の)取材見学などは、皆さんが想像するより何倍も価値があって無茶苦茶面白いのに、そのすごさがなかなか伝わらないんですよね。記事を読むだけでは得られないし、現場に足を運んで実際に見る情報量は記事よりも多いのです。
人間とは五感で物事を感じる生き物です。テキストで読む際の情報が10だとすると、直接目の前で理解すれば、(質問などで)納得するまで情報を「落とし込める」ので、その量は何倍にもなると僕は思っています。自分もこれまで取材してきた中で、人と話して直接質問する際に(得られる)情報量の多さを体感してきました。それを味わってほしいですね。
ラジオ「居酒屋:電ふぁみにこげーまー」第4回。左がサイバーコネクトツーの松山洋氏、手前が漫画『NARUTO -ナルト-』の元担当編集者で「ジャンプスクエア」編集長の矢作康介氏、奥が白泉社会長の鳥嶋氏、右がバンダイナムコホールディングスIP戦略本部アドバイザーの鵜之澤伸氏(写真はマレ提供)
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