「じゃがりこ」が350億円の“お化け”商品に成長したワケ “いじられ”力と独自製法がカギ:2020年に25周年(3/5 ページ)
1995年に発売された「じゃがりこ」。売り上げが右肩上がりで増えており、350億円にも達した。支持される背景には、マネできない製法と“いじられ力”があった。
マネされにくい製法
ある時期まで圧倒的なブランド力を誇っていた菓子が、スーパーやコンビニで似たようなプライベートブランドの商品が登場することで、売り上げがじりじりと落ちるケースが散見される。また、競合からも新商品が日々発売されている。競争が激しい中で、じゃがりこはなぜ生き残ってきたのか。
松井氏は「他社にマネできない商品だからではないか」と分析している。過去に、じゃがりこそっくりな商品が何度か登場したことはあった。しかし、サクサクとした食感などを模倣できず、じゃがりこを脅かす存在にはならなかったという。
じゃがりこの製造工程は企業秘密になっており、外部に公開していない。製造ラインが複雑で、工程が1つでも狂うと違う食感になるという。本気でマネをしようとすると、初期の設備投資がかさむので、それが参入障壁にもなっている。「現在、当社で新商品を開発する場合、じゃがりこほど製造に手間をかけるという判断はしにくいのではないでしょうか」と松井氏は語る。
じゃがりこは定期的に期間限定商品を投入しているが、試作にも時間がかかる。ポテトチップスならポテトにまぶす味を変えればいいが、じゃがりこの場合は100パターンの試作をしようとすれば、250時間かかる計算になる。
ファンが勝手に盛り上がるのでブランドが老化しない
どんな有名商品もユーザーとのコミュニケーションを怠ると、ブランドが“老化”してしまうリスクがある。じゃがりこも、一本調子で成長を続けてきたわけではなく、売り上げが苦戦する時期もある。しかし、その度にファンが新しい食べ方や楽しみ方をSNSなどにアップし、ユーザー間で“勝手に”盛り上がることがあるという。どういうことなのか。
象徴的なものとしては「じゃがりこタワー」が挙げられる。これは、誕生日などのサプライズ演出のために、じゃがりこのカップを何重にも積み上げるものだ。マーケティング担当者が2015年より前のSNSの投稿を分析すると、このタワーの写真が多数投稿されていることが判明した。カルビーでは「単価が安くて気軽に購入できる」「積み上げやすい形状になっている」「商品のバリエーションが豊富で個性を出せる」といった点が女子高生に受け入れられている要因だと分析。ユーザー発のブームを後追いする形で、16年にタワーの制作方法などを紹介した「じゃがりこタワーケーキ応援サイト」を立ち上げた。
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