ミニストップ「おにぎり100円」がもたらした“意外な変化”:上げるか下げるか「値決め」最前線(1/3 ページ)
ミニストップが7月に始めた「おにぎり100円」施策。主力商品のおにぎりを最大30円値下げした。開始から3カ月がたち、効果はどれほど出ているのか。また、“100円”という値決めは成功なのか。狙いや現状について聞くと、意外な変化も見えてきた。
上げるか下げるか「値決め」最前線
消費増税で「価格」への注目度が高まっている。原材料費高騰や人手不足などの課題が山積する中、値決めは経営を左右する重要な要素。技術革新によって、需給に応じた変動価格を新たに導入する業界も増えている。値決めの最新事情とは?
連載第1回:なぜ赤字でも安売りするのか? 「失敗する値決め」と「成功する値決め」の違いに迫る
連載第2回:価格がコロコロ変わる! ビックカメラが「電子棚札」を導入したら何が見えてきたのか
連載第3回:本記事
「おにぎり毎日100円!」――7月に始めた施策が話題になったミニストップ。7月2日から全国約2000店舗で、主力商品のおにぎりの本体価格を100円に統一した。「手巻紅しゃけ」「手巻ネギトロ」など、旧価格が130円だった商品は、1個で30円もの値引きになる。原材料価格が高騰する中で、思い切った策だ。
値下げから3カ月たち、「おにぎり100円」施策の効果は出ているのだろうか。そして、“100円”という値決めは成功しているのか。同社に施策の狙いや現状について聞いた。
ファストフード以外の「柱」が必要に
ミニストップの足元の業績は厳しい。2019年2月期の連結売上高は前期比0.8%減の2053億円、営業損益は5億5000万円の赤字だった。今期は不採算店舗の閉店も進めており、業績の立て直しが急務となっている。
ミニストップといえば、ソフトクリームや「ハロハロ」などのファストフードに独自性や強みがある。長らくその“看板”を前面に立ててきたが、これまでよりも客数を増やすために、他にも大きな柱となる商品や施策が求められている。
「PI値(レジ通過客1000人当たりの購買指数)を見ると、おにぎりは飲料やたばこに次ぐ数値。かなり上の方になる。おにぎりをどう伸ばすか、ということは重要な課題」と、商品本部デリカテッセン商品部部長の竹内英雄氏は説明する。これまでも、おにぎり5商品を対象に、1個100円で販売するセールを年に数回実施してきた。このセールが毎回好評であることも、おにぎりの施策強化の理由だという。
では、なぜ5商品を100円で販売するセールを続けるのではなく、全商品の通常価格を100円に引き下げたのか。竹内氏は「(期間限定ではなく)継続した取り組みが必要だった。そして、おにぎり全体を対象にした方がお客さまに響くと考えた」と話す。実際、4月に青森県内で「100円おにぎり」を先行販売したところ、5品セールよりも高い効果が出たという。その結果をもとに、全国展開に踏み切った。
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