花王は11月1日、極めて細い繊維を吹き付けて作る“はがせる皮膚”を商品化すると発表した。繊維を混ぜた液体を帯電させ、専用機器から噴射することで、糸状に引き延ばしながら肌の上に極薄の膜を作る「Fine Fiber技術」を活用。美容液と組み合わせて使い、保湿効果を高めるスキンケア用品として、同社の化粧品ブランド「est」と子会社のカネボウ化粧品が展開する「SENSAI」から、それぞれ12月4日に発売する。価格は専用機器が5万円(税別、以下同)、膜を作るためのポーションが8000円(45回分)、併用する美容液が1万2000円(90回分)。
美容液を塗った肌にポーションを吹き付けて手で押さえると、美容液を吸収しながら肌に密着し、透明な“もう1枚の皮膚”のようになる。出来あがった薄膜は美容液を長時間を保持するだけでなく、肌との段差が少ないため、凹凸のある部分の上に作ってもはがれにくいという。美容液を染みこませたシートを顔に乗せて使うフェイスパックと違い、スキンケアをしながら動き回ったり眠ったりすることが可能だ。使い終わったら、膜のある部分を少しこするだけで簡単にはがせるようになる。
花王の澤田道隆社長によれば、Fine Fiber技術はもともと、生理用品やオムツ向けの繊維開発で生まれたという。細い繊維を作る研究を進めるうちに、人間の皮膚に近い皮膜を作れるのではないかと考え、化粧品分野へ舵を切った。
開発当初は、専用機器も工場で使うような大型のものだったが、女性が自宅で使えるサイズにするため、パナソニックで美容家電などを手掛けるチームに協力を依頼。パナソニックが持つ金型技術や「ナノイー」の技術を応用し、4年ほどかけて片手で持てるサイズの専用機器「バイオミメシス ヴェールディフューザー」を共同開発した。
花王は今後、このディフューザーと組み合わせて使う美容液や薬剤などを開発し、スキンケアだけでなく、メイクアップやボディーケア、医療などの分野に応用していく計画だ。また、Fine Fiber技術の応用領域を広げるため、用途研究などの過程を専用Webサイトで順次公開。幅広くアイデアを募集し、オープンイノベーションを促進するとしている。
「美の世界で女性の笑顔をサポートする、医療や治療の分野で苦しんでいる人を助けるといったことを実現しながら、グループ全体としてこの事業で1000億円という数字を達成できればと考えている」(澤田社長)
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