「がん離職」を防ぐために100万円支給――「社員の病気=経営課題」に会社はどう向き合ったか:連載「病と仕事」(3/3 ページ)
2017年にがんにより死亡した人は37万3334人に上る。働き盛りの年齢でがんを発症する可能性もゼロではない。精神面、経済面、仕事面のケアが求められる従業員の病に対して、職場はどういったサポートができるのだろうか。がんに罹患した社員に対する基金を創設したガデリウスグループの経営統括本部本部長に創設の経緯などを取材した。
「がん離職」は会社の「経営課題」
放射線治療は1カ月、土日祝を除いて毎日継続しなければならなかったため、午前中は休暇を取り、午後から出社していたという。がんの治療にかかる時間や費用はさまざまであり、予測することが難しい。高原さんの場合はどうだったのか。
「高額療養費制度を利用したので、手術などにかかる基本的な費用は毎月決まっている限度額ですみました。ただ、この他に入院中の差額ベッド代や、退院後の放射線治療などの費用もかかりましたから、私の場合はトータルで50万円ほど必要になったと記憶しています。今後服用するお薬に30〜40万円かかることを考えあわせても、全てがん基金で賄えます。また、入院と通院のために休暇が必要となりましたが、療養休暇を利用して、経済的な心配をする必要もなく助かりました」
ガデリウスグループが行っているがん基金などの支援制度は、経済的な側面からがんの治療をサポートするものである。しかし、池田さんは経済的側面よりも、むしろ精神的側面において、職場による支援が求められると話す。
「介護離職の問題と同様に、“がん離職”も会社として取り組むべき大きな問題だと考えています。がんにかかると、多くの場合、社員はまず『会社に言えない』という問題を抱え、やがて、「会社を辞めなければならない」と思い悩んでしまうようです。当社の場合、がん基金などの支援制度を用意し、会社としてがんの社員をサポートする姿勢を打ち出しているので、これが気持ちの安心感につながっているのではないでしょうか」
ガデリウスグループには、5つの理念があり、その3つ目の理念には、「従業員一人ひとりの心身の健康を第一に考え、働きやすい職場環境を提供します」との文言が含まれている。このような意識は、労働人口が減りゆく日本においては、今後ますます重要になるのではないだろうか。高原さんは、最後にこのように締めくくった。
「会社に支援制度があると、周りのがんの人を支えようという意識が生まれやすくなるということがあるのではないでしょうか。私は、がんのことを明かした同僚から、『自分にできることがあれば、何でもやりますから、治療を最優先にしてください』と声をかけてもらい、人の温かみを身に染みて感じました。私も、これから社内に病気の問題を抱える人がいたら、自分がしてもらったのと同じように、支えになって差し上げたいと思います」
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