2015年7月27日以前の記事
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ヤリスの向こうに見える福祉車両新時代池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/7 ページ)

還暦もそう遠くない筆者の回りでは、いまや最大関心事が親の介護だ。生活からクルマ消えた場合、高齢者はクルマのない新たな生活パターンを構築することができない。そこで活躍するのが、介護車両だ。トヨタは、ウェルキャブシリーズと名付けた介護車両のシリーズをラインアップしていた。そしてTNGA以降、介護車両へのコンバートに必要な構造要素はクルマの基礎設計に織り込まれている。

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 さて、トヨタにとっての大勝負でもあるBセグメントプラットフォームの頭出しとなる、ヴィッツ改めヤリス(ただしプロトタイプ)の試乗会が、袖ケ浦フォレストレースウェイで開催されて、クルマの出来に驚いたというのが先週の話。今回の話は福祉車両のことだ。

 まあサーキット試乗会なのに福祉車両の話をするあたりが筆者の変なところだが、トヨタのビジネスのみならず、社会的にもとても重要なことなので、しっかりと取り上げたいのだ。


ヴィッツの後継となるヤリス。袖ケ浦フォレストレースウェイでプロトタイプのお披露目試乗会が行われた

高齢者からクルマを取り上げたとき

 さて、還暦もそう遠くない筆者の周りでは、いまや最大関心事が親の介護だ。筆者の場合、母はずいぶん早くから脳梗塞の後遺症で寝たきりとなり、5年前に他界した。そして今、昭和10年生まれの父が介護施設に入所中である。そこへ入ってもらうまでがまた大変だったのだが、それは本稿とは別の話なので全部端折って、クルマを手放した時の話をする。

 実感として、80代の人が生きていくのは、それまでとは違うレベルで制約が多くなる。当たり前にできることができなくなる。クルマの乗り降りも大変だ。それでも自分でクルマを運転できていた頃は、買い物に出掛けたり病院に行ったり、自分の面倒を自分でみることができた。

 しかし80歳のとき、筆者が助手席に乗って、父の運転が少し怪しくなっていることを本人に告げた。具体的にはペダルの操作が乱暴になっていた。加速もブレーキも加減ができず一気に踏み込んでしまう。慎重な性格なのでまだマシだとはいえ、この踏み方だと、自分が作り出した加速にびっくりして踏み間違いが起こらないともいえないと思って注意を喚起した。

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