2015年7月27日以前の記事
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ヤリスの向こうに見える福祉車両新時代池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/7 ページ)

還暦もそう遠くない筆者の回りでは、いまや最大関心事が親の介護だ。生活からクルマ消えた場合、高齢者はクルマのない新たな生活パターンを構築することができない。そこで活躍するのが、介護車両だ。トヨタは、ウェルキャブシリーズと名付けた介護車両のシリーズをラインアップしていた。そしてTNGA以降、介護車両へのコンバートに必要な構造要素はクルマの基礎設計に織り込まれている。

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 今回のヤリスでは、回転シートを、サンルーフやオーディオと全く同じようにオプションとして扱う形に改め、型式認定を取得した。だから通常モデルのページに極めて普通に掲載できるようになった。


後付可能なオプションパーツとして開発された回転シート

 介護というのは、日々衰えていく高齢者との戦いだ。今は普通に乗降できても、明日はそれが難しくなり、次にリフトが必要になり、最後は車椅子やストレッチャーごとでないと乗れなくなる。そうやってシームレスに状況は進んでいく。だから、オプションで気軽に選べ、なおかつ、簡単に部品交換で後改造が可能なことは極めて大事なのだ。

トヨタの戦略としての高齢者対策

 さて、ではなぜヤリスなのか。スペースのあるノアやRAV4の方が車椅子の収納も楽だろう。しかし現在着実に増えつつある老老介護の場合、さまざまな都合でコンパクトカーが選ばれることが多い。だからヤリスにこそこういう仕様が必要なのだ。

 ヤリスの回転シートはよく考えられている。シートが回転するのは前後スライドの特定位置でのみだ。足を挟んだりぶつけたりすることを考えれば、安全上これは当然の措置だが、まずスライドがこの位置でワンタッチで止まるようにした。

 そして、シートの回転については、一軸ではなく4リンクを組んで、運転席の場合は左後ろ角を中心に、右が後退するように回転を始める。膝をぶつけないためだ。その回転は途中からリンクによって軸を移し、右後ろ角を軸に変えてシートの前端部がドアの外にせり出して行くように回る。しかもその際に、シート前部が下がるチルト機構が組み込まれている。


リンクを介して、シート回転時に膝を逃がしながら車外へと位置をずらしながら、かつチルトで前下がりにもなる

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