20万台売れた! 「銘柄ごとの炊き分け」に目を付けたアイリスオーヤマの炊飯器:あの会社のこの商品(3/5 ページ)
2009年に家電事業に本格参入したアイリスオーヤマ。ユニークな機能を持った商品が多いが、その中でも「銘柄量り炊き炊飯器」が注目を浴びている。銘柄量り炊きとは何か? どれほどユニークなのかというと……。
食味鑑定士の舌で銘柄ごとの最適な水量を判定
ところで、「銘柄量り炊き炊飯器」とうたっていることから分かるように、米は銘柄によって最適な水分量が違う。比較すると、微妙に違うどころの話ではなく、目で見て明らかなほど異なる。
この銘柄ごとの最適な水量は、同社が炊飯・試食を繰り返したことで明らかにした。開発の7〜8割は、銘柄ごとの最適な水分量を特定することであったという。
対応することにした銘柄はコシヒカリ、あきたこまち、つや姫、ゆめぴりか、ひとめぼれ、ヒノヒカリなど全部で31。米を炊いて試食を繰り返すのは途方もなかったが、「遺伝子的に近いものは似た特性を持っているので、見当がつけやすいところがありました」と原氏は振り返る。
銘柄ごとに最適な水分量を判定したのは食味鑑定士。パックご飯の味も決めるご飯のエキスパートだ。社員の中に食味鑑定士はおり、評価にはバラつきが生じることから、結果をすべて数値化してから標準的な値を最適とみなした。
判定に当たっては精米時期も考慮した。「精米したての米や、精米からかなり時間が経った米のどちらかだけでは正確には判定できません。銘柄ごとに精米時期の異なる米を使い、合数、水分量を変えて炊き試食。店頭に並んでいる米はどれぐらい前に精米されたものなのかも考慮して、最終的に銘柄ごとの最適な水分量を決めています」と原氏は言う。
どうやって銘柄ごとに最適な水量で炊くのか?
米と水量の計量は、本体に搭載した重量センサーで行う。銘柄ごとに最適な水量で炊くにはまず、本体で銘柄やかたさなどを選び、内釜をセットして「計量」ボタンを押す。内釜に洗米前の米を入れ、もう一度「計量」ボタンを押して米の量を量り、必要な水分量を計算。そして洗米したものを内釜に入れ、表示されている水分量を入れたら、ふたを閉め「炊飯」ボタンを押す。
また、熱源であるIHヒーターと釜がわかれるようにした。分離すると、釜はお櫃(ひつ)、IHヒーターは調理器として活用することができる。
このアイデアは、特徴ある機能を検討する社内のアイデアミーティングの場で、「釜とIHヒーターが分離できるようにできれば便利」といった声があがったことがきっかけになり採用された。ただ、分離できるようにすると、炊飯器ではおなじみの保温機能が搭載できない。この点については、一人暮らしや二人暮らしの場合は保温機能を使わない人が多いことが事前のアンケート調査で判明したことから思い切って省略することにした。
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