突如、明らかになった簿外債務35億円 最後まで説明責任を果たさなかった婦人用バッグ卸が示す「倒産の図式」:あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(11)(3/4 ページ)
成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。
「分からないことだらけ」――怒り心頭のステークホルダー
14年のリスケ要請により、モード・フアムの経営実態が明るみに出ることとなった。金融機関の借入金は、11行から約12億円と決算書より数億円も過大で、N社からの借入金は約35億6000万円まで膨れ上がっていた。
この約35億6000万円は、決算書に一切記載されていない簿外債務だった。
関係者から「売上高の2倍以上の借入金が突如として現れた。こんなことをされては財務分析による与信判断は意味をなさない」「N社という企業名は、このときに初めて聞いた。35億円をいつ借りて、どのように使われたのか。年商1億円のN社という企業がどうしてモード・フアムにそんな多額の資金を貸し付けられたのか。分からないことだらけだ」といった驚きや怒りの声が数多くあがったのは当然だろう。
14年4月22日にバンクミーティングが開催され、今後の事業計画が提示された。
その内容は(1)金融機関への借入金は、年内は債権額の0.2%ずつを返済し、15年以降は0.35%ずつを返済する、(2)未払いの租税債務や社会保険料についても分割弁済する(3)社員は全員解雇、アルバイト社員が業務を担当するなどであった。
しかし金融機関にとっては、モード・フアムの収益や財務の状況が分からないまま、0.2%や0.35%といった根拠に乏しい返済額を提示され、さらに完済までに数十年かかる返済計画を提出されても、とうてい同意できるものではなかった。
また、関係者の最大の関心事であった簿外債務約35億6000万円について、過去にさかのぼっての調査結果などは公表されなかった。
N社の代表であると同時にモード・フアムの監査役であり、同社の経理を担当していたA氏も翌15年6月には監査役を辞任。大阪地裁へ提出された破産申立書の債権者名簿にもN社からの借入金は記載されておらず、借入金の資金使途や流れについて、ついに真相は明らかにされないままだった。
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