突如、明らかになった簿外債務35億円 最後まで説明責任を果たさなかった婦人用バッグ卸が示す「倒産の図式」:あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(11)(4/4 ページ)
成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。
10年間にも及んだコンプラ違反
粉飾決算に始まり、簿外債務について説明責任を果たさないままA氏の辞任となるまで、モード・フアムのコンプライアンス違反は約10年間にも及んだことになる。
14年11月以降、複数の取引金融機関からモード・フアムおよび代表に対して貸金返還等請求訴訟が提起されていた。この訴訟の判決を受けて、一部金融機関が代表資産の差押えを行い、一部債権の回収を図ったことで事業環境はさらに悪化する。
16年5月以降は、金融機関への返済額を債権額の0.1%に減額して対応していたものの、先行きの見通しが立たないことから同年7月29日に事業を停止、自己破産申請の準備に入った。粉飾決算や簿外債務が発覚してから2年4カ月の月日が流れていた。もっと早い段階で正道に戻っておけば、最悪の結果にはならなかったのかもしれない。
大口焦げ付きが発生し資金繰りが悪化、粉飾決算を行い、多額の債務を簿外に隠すというこの図式は、過去にも複数の倒産企業で見ることができるが、いずれのケースも、粉飾決算や簿外債務が発覚した後の利害関係者の対応は決して優しくはない。企業経営においてコンプライアンスが重視される昨今、企業経営者はいっそう襟を正すべきだろう。
著者プロフィール
帝国データバンク 情報部
1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。
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