東京モーターショーに出現、「おしゃべりトラック」は運転の世界をどう変えるか:クルマと人とのコミュニケーション(3/4 ページ)
東京モーターショーに「しゃべるトラック」がお目見えした。音声だけでなく光る文字でコミュニケーションが可能。運転や道路の世界をどう変えるか。
音声とカラフルな光る文字で「おしゃべり」
このQuon Concept 202Xは、ドライバーと歩行者とのつながりを意識して開発された近未来型のコンセプトトラックで、今回筆者が注目したしゃべる機能以外にも、AIやタブレット端末によるパーソナライゼーション(各ドライバーに向けた自動カスタマイズ機能)、カメラモニタリングシステムといった、近い将来実用化され得る先進のテクノロジーがふんだんに搭載されていた。
東京モーターショーの青海会場に勢ぞろいしていた「働く車両」の中でも、このQuon Concept 202Xがひときわ異彩を放っていたのは、迫力あるフロントグリルと、カラフルな文字ディスプレイ、そして音声での「意思表示」機能だった。
現在、一部の配送トラックにも、「バックします、ご注意ください」と音声案内する車両はある。だが、このQuon Concept 202Xには、従来車と一線を画すポイントとして、音声だけでなく、「緊急停止します」「お先にどうぞ」「点検中」などの文字(日本語・英語)を表示すると同時に、それぞれの言葉に意味付けされた「色」をグリルやサイドに光らせ、道路使用者へのより細かな意思伝達を図る点があげられる。
モーターショーで展示されていたこのトラックは各ボタンが車外に設置されており、それを押すことでそれぞれの言葉をトラックにしゃべらせていたが、実装されれば無論、車内からドライバーの意思を伝えることができる。
こうした「しゃべる車両」を開発したのが、乗用車メーカーではなくトラックメーカーであったこともうなずける。
一般的にトラックは、その図体(ずうたい)と構造から乗用車以上に死角が多く、事故が起きると乗用車以上に被害が大きくなる。そのため、こうして音声や文字表記で相手に注意を促したり、ドライバーの意思を伝えたりすることは、乗用車以上に大きな意味を持つのだ。
こうした機能が付いたトラックが将来一般化すれば、コミュニケーションの齟齬(そご)やストレスは大きく軽減され、関連する事故も未然に防げるといった期待が持てるだろう。
関連記事
- 京急踏切事故で垣間見えたトラックドライバー業界の「構造的な闇」とは
電車の乗客ら35人が負傷、トラック運転手1人が死亡した京急踏切事故。その背景に筆者が垣間見たのは極端に高齢化が進むトラック業界の闇だった。データや現場取材、自身のドライバー経験を踏まえ迫る。 - 「台風19号でもトラックの中止連絡無かった」――走り続けた零細物流が陥る“負の業界構造”とは
台風19号では多くの業界がサービスや営業を停止した。しかし筆者は「中小運輸では走っていたトラックも少なくない」と指摘。運輸業界特有の構造的問題に迫る。 - アマゾン「置き配」の衝撃 「お客様が神様で無くなった世界」で起こり得る“格差問題”
配達員が荷物をユーザーの指定場所に置く「置き配」。アマゾンジャパンが標準配達方法にする実験を実施した。筆者はユーザー間で一種の「格差」が生じる可能性を指摘。 - 「不景気だとカラムーチョが売れる!?」――知られざるナゾの法則に迫る
湖池屋の独自データで、不景気時にカラムーチョが売れる傾向にあることが判明。消費のメカニズムか単なる偶然か、追った。 - ホリエモン「お前が終わっている」発言に見る、日本経済が「本当に終わっている」理由
ネット上の「日本終わっている」にホリエモンが「お前が終わっている」と反論、発言は賛否を呼んでいる。筆者はここに、日本の賃金水準がもたらす本質的な問題を見いだす。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.