医療業界を変えたエムスリーに聞く 革新的サービスを開発するためのカギ:「課題ドリブン」で出発し、「ソフトウェア・ファースト」で解決(3/3 ページ)
世界10カ国の医療従事者を巻き込む一大メディカルプラットフォームを構築したエムスリー。医療業界という非IT領域にテクノロジーを持ち込み、革新的なサービスを打ち立てた同社のサービス開発戦略を聞いた。
課題ドリブンでサービス開発を進める文化を作るには
及川 最近は、さまざまな産業の事業会社がITを使った事業のサービス化を進めています。その際、エムスリーさんのような課題ドリブンなサービス開発の文化を作りたくても、なかなかうまくいかず、事業変革も遅々として進まないというケースが多いように感じています。エムスリーさんはどうやって文化を作ってきたのですか?
山崎 しっかりとしたビジョンの下で、これまで話してきたような課題解決ありきのアプローチを徹底してやってきたというのが大きいと思っています。
もし、事業会社が何もない状態からITによる課題解決文化を醸成していくなら、大きく3つのステップで組織を変えていくのがいいかもしれません。
最初のステップは、自社にITを導入するフェーズです。例えば、資料共有にGoogleのドキュメントやスプレッドシートを使うようにして、ファイルは全部GoogleドライブやDropboxのようなストレージで管理するとか。コミュニケーションツールとしてSlackを導入してみるのもいいかもしれません。ITを使ったサービスを考えるより先に、自身の課題を解決してITの便利さを体感するだけでも、考え方がずいぶん変わると思います。
次のステップは、そういうツールを使ってより大きな課題を解決するためのシステムを開発してみることです。もし社内にエンジニアがいなければ、外部委託してもいいかもしれません。自身の課題解決のために、かゆいところに手が届くようにきちんと企画して、今、足りないと感じる部分だけを構築していきます。
最後のステップはそれを内製化して、自分たちが最も使いやすいシステムの開発を目指します。
及川 自分たちでITサービスを使いこなさなければ、今のマーケットに何が足りていないのかが分からないし、その足りないものを自分たちで埋めていくには開発を内製化したほうがいい。そういう順番で変えていくということですね。
山崎 ええ。今お話ししたステップは、私たちが医療業界でやってきたことにも通じます。事業としての新しいサービス開発をする前に、こうやって段階的に課題解決力とそれに対応する開発力を高めていけば、「ギャップを埋める」という考え方や課題ありきの開発文化が自ずと醸成されていくのではないかと思います。
及川 貴重なお話をありがとうございました。
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