「コンビニの書店強化」が大コケすると思う、これだけの理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
コンビニが客と本を結びつける場になるのではないか、と注目を集めている。店内の書店棚を充実させたり、書店との一体型店舗を始めたり、大手3社はさまざまな取り組みを始めているが、本当にうまくいくのか。筆者の窪田氏は否定的な見方をしていて……。
書籍全体の多様性が失われていく恐れ
もちろん、当初は売上的には良い数字が出ることもあるかもしれない。先の産経新聞にも、書籍専用の棚を導入したローソンのコンビニについて、「書籍の売り上げが未導入店に比べて倍以上に伸びるとあって、現在は設置店舗が約4500店まで増加した」とある。
が、売れるからといって書籍専用の棚のあるコンビニを増やしていけば、いずれは1店舗ごとの売り上げは落ちていく。出版科学研究所によれば、2018年の紙の出版販売額は約1兆2900億円で14年連続で前年実績を下回り、ピークだった1996年(2兆6563億円)の半分以下にまで縮小している。このすさまじい勢いでシュリンクする市場の中で、根本的な問題を解決することなく「売り場」だけで増やせば、どういう結末になるのかは火を見るよりも明らかだ。
このようなビジネス的な問題もさることながら、筆者がコンビニで読者ニーズを掘り起こそうという試みに反対をするのは、(2)の「コンビニ主導で売れる本づくりが進行して多様性が失われる」ということが大きい。
皆さんも近所のコンビニの棚を見ていただければすぐに分かるが、コンビニというのは基本的に「売れるもの」しか置かない。
粗利や売上に変動するロイヤリティがゆえ、売れる商品を置かないとFC本部がもうからないシステムだからだ。だから、FC本部が徹底的にマーケティングをして、消費者のニーズをつかんで魅力的な商品を開発し、それを日本全国すべてのFC店に変わらぬ品質で流通させる。
そんなコンビニで書店の機能が強化されれば当然、コンビニ本部のマーケティングに基づく書籍が大量に流通する。全国の書店の販売データに基づいてはじき出された「売れる本」がセレクトされるのは当然として、ヒットのおにぎりやお弁当を開発するのと同じようなノリで、ベストセラー著者を起用して、似たようなタイトル、似たような企画の本が量産されていく。実際、既にこの10月からセブンがグループ限定のオリジナル新書を発売している。
「それの何が悪いの?」と思うかもしれないが、このようにコンビニ主導の本がどんどん売れるようになると、構造的な不況であえぐ出版社がワッとこのスキームに飛びついてしまう。それはつまり、専門書や研究書などの「売れないけど存在意義のある本」が今以上に敬遠されていくことでもある。コンビニ主導の「売れる本」がもてはやされることで、「売れない本」が軽視され、結果として出版文化の多様性が失われていく恐れがあるのだ。
「そんな大げさな」と笑うかもしれないが、実は同じことが既に「雑誌」で起きている。
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