結局、大型ショッピングモールは街を生かすのか、殺すのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
首都圏で大型ショッピングモールが相次いで開業している。巨大な商業施設は地域の人々に便利さと、楽しさを提供しているが、実のところはその町の独自性を奪っているのではないか。そのような指摘がある中で、筆者はどのように見ているのかというと……。
そこにいるだけで楽しめる場
こういう話を聞くと、「こいつは巨大ショッピングモールのいいところばかりを持ち上げている!」とかなんだと批判をしてくる方も多いと思うが、先ほども申し上げたように、この問題は「昔ながらの商店街は善、ショッピングモールは悪」みたいな単純な話ではない。
巨大ショッピングモールがもたらす弊害も当然ある。が、一方で地方にとってのプラスがあるのも事実だ。「ショッピングモールのせいで地方はめちゃくちゃなので絶対に認めん!」みたいな全否定をしても、地域の人々にとって「得」がないと言いたいのである。
もっと言ってしまうと、そのようにショッピングモールを敵視して、「昔ながらの商店街」を礼賛しているだけでは、地方には未来がない。
例えば、商店街再生の成功モデルとしてもてはやされ、「奇跡の商店街」と評される高松丸亀町商店街。では、ここが「昔ながら」とか「人情」で復活したのかというと、そうではない。
行ったことがある人ならば分かるが、ここは全長470メートルにも及ぶアーケード商店街を、北からA〜Gまでの7つの街区に分けて、中心には圧巻の巨大ガラスドームとなっている。隣接する形で、駐車場も完備されており、美術館などもある。要するに、商店街というよりも巨大なショッピングモールなのだ。
全国で成功した商店街も往々にして、このようなモール化したケースが多い。規模はそれぞれだが、全店共通のキャンペーンやイベントを企画して、商店街を散策するだけでも楽しくさせる。つまり、ショッピングモールのように、「買い物をする場所」ではなく、「レジャースポット」という機能を強化させているのだ。
このことからも分かるのは、大切なのはショッピングモールか、商店街かという話ではない。人口が減っていく地方において、小売業がただ「モノを売る場」を提供することから、「そこにいるだけで楽しめる場」をつくりだすことができるかということだ。商店街や百貨店の衰退は、「売り場をつくれば客が金を落としてくれる時代」が終わりつつあることを示しているのではないのか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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