結局、大型ショッピングモールは街を生かすのか、殺すのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
首都圏で大型ショッピングモールが相次いで開業している。巨大な商業施設は地域の人々に便利さと、楽しさを提供しているが、実のところはその町の独自性を奪っているのではないか。そのような指摘がある中で、筆者はどのように見ているのかというと……。
地域の防災・復興の拠点として
2011年3月11日。東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市で、多くの地域住民が避難したのが、やや内陸にあったイオン石巻ショッピングセンターだったというのは、有名な話だ。
津波が迫る中で、警察官からの要請を受けたモールマネージャーは現場判断で、およそ900人を屋上に避難させて、2階の飲食コーナーも「臨時避難所」に開放した。食料、水、毛布などを提供して欲しいという要請にも本社の判断を待つことなく独断で対応して、倉庫にあった商品在庫を出した。震災から5日経過した際に、イオン石巻には2400人の被災者が集まった。
コンビニは社会インフラだ、災害時の拠点になると訴える人は多いが、実は避難所としての収容力や、商品の備蓄、立体駐車場など、ショッピングセンターのほうが防災拠点としての機能ははるかに優れているのだ。
この時の教訓を受けて、イオンモールでは災害対応の拠点としての機能を積極的に打ち出している。18年6月28日〜7月8日に西日本に激甚な被害をもたらした豪雨の際、岡山県の高梁川が氾濫危険水位に達した際には、近くの「イオンモール倉敷」の立体駐車場を一時避難所として開放した。
同社Webサイトによれば、警備員のほか社員6名が緊急出勤して対応して、一部館内のトイレも開放。この情報は倉敷市からの災害情報(エリアメール)で発信されて、7日午前1時には約2300台の車両を受け入れたという。
このように、人口減少でリソースの足りない地方では、実は避難や復興の拠点として巨大ショッピングモールが注目されている。施設の開放はもちろん、イオンは小売業として初めて、陸上自衛隊補給統制本部との間で「大規模災害時における物資の供給要請に関する協定」を締結しているのだ。
残念ながら、このような災害対応は、個人経営の集まりである商店街では難しい。巨大ショッピングモールという規模がゆえに実現できる「強み」だ。
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