結局、大型ショッピングモールは街を生かすのか、殺すのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
首都圏で大型ショッピングモールが相次いで開業している。巨大な商業施設は地域の人々に便利さと、楽しさを提供しているが、実のところはその町の独自性を奪っているのではないか。そのような指摘がある中で、筆者はどのように見ているのかというと……。
大型書店を運営するのは非常に困難
前代未聞のSOSに当然、メディアも食いついた。「オトナンサー」の取材に応じた店長は、苦しい台所事情を明かし、「撤退」の可能性も否定しなかった。
『店は自社ビルの中にありますが、なかなか採算が取れない状況です。車社会の進展で、無料駐車場が確保できない店の集客は難しくなっています。ここ数年は、北陸新幹線敦賀開業を見据えた再開発計画で、公共交通機関の乗り場が店の近くから駅側に移動し、店周辺の人の往来が急減しています。来店客は3割減少しました』(オトナンサー 2018年7月17日)
もし勝木書店本店がなくなってしまったら、福井の中心部で「品揃えの豊富な大型書店で本を選ぶ」という体験をすることはかなり難しい。駅前の西武百貨店新館には紀伊国屋が入っているが、そこまで大規模店ではない。しかも、この新館は2021年2月末に閉館されると先日と発表があった。「だったらもうアマゾンでいいじゃん」と思う人も多いかもしれないが、検索エンジンではなく、リアル大型書店を散策することで、出会える本もあるのだ。
そんな大型書店絶滅の危機に瀕する福井駅周辺と対照的に、郊外のショッピングモール内にはそれなりの規模の書店がある。が、それを上回る規模のものがイオンモール新小松にある。勝木書店が運営する「Books KaBoS」という大型書店で「約1,000m2の店舗に約25万冊の蔵書」(イオンモール新小松プレスリリース 2017年3月24日より)を誇っているのだ。
もうお分かりだろう。「町の本屋さん」が苦境のいま、このような大型書店を単体で運営するのは非常に困難だ。しかし、巨大ショッピングモールという「レジャー施設」の中の一つの機能として求められることで、なんとか大型書店が存続できている現実があるのだ。
このように巨大ショッピングモールというスケールメリットがゆえ、地域の人々にもたらされる恩恵が確かにあるのだ。その中でも実はもっとも大きいのが(3)の「大規模災害の避難場所など、地域の防災・復興の拠点になる」ことではないかと思っている。
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