売れる店と売れない店は何が違うのか――データだけでは分からない「両者を分かつもの」:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」(3/3 ページ)
社長が自らが先頭に立って統計学を学び、データドリブンな経営を目指す――。そんな取り組みで注目されている「グッデイ」の三代目社長 柳瀬隆志氏に、「売れる店と売れない店を分かつもの」について聞く。
売れる店と売れない店を分かつもの
柳瀬: 小売って他の店でうまくいったことを、ただ単にまねしてもうまくいかないですよね。それってお客さまに、「スタッフの気持ちが入っているか否か」が伝わっちゃうからじゃないかって思うんですよ。オカルトっぽいですけど、気持ちが入っている仕事と入っていない仕事では、明らかにパフォーマンスや結果に差が出てしまうんですよね。
長谷川: そういえば僕、大学時代に3年半程ブラッセリーでアルバイトをしていたんだけど、3年半もやっていると気持ちに浮き沈みがあるわけ。店長からしたら同じに見えたと思うけど、ノッているときはお客さんの方がそれに気づいてチップをバンバンくれるの。
柳瀬: 店舗回りをしていても、自動ドアが開いて足を踏み入れた瞬間、良いか悪いかって分かるんですよね。空気が違うんです。よどんでいたり、さわやかだったり、明るかったり。そういうデータには現れない感覚値みたいなものが人間にはありますよね。
長谷川: 売れてる店舗と売れていない店舗は、何が一番違うと思いますか?
柳瀬: 地元の人に知られていて立地も良く、何が悪いのか分からないのに短期間で何度もテナントが変わって「必ず潰れる店」ってあるじゃないですか。だから本当にさまざまな角度で分析してみないと見えてこないですよね。ITの進歩によって物事の解像度が上がって詳細が見やすくなり、ほんのささいな原因でも突き止められるケースが増えてきました。「何か気になるけど、何なのか」というのが定量化され、ノウハウになって次につながる。
「消費者の好みが多様化している」と、さらっとニュースで言われたりするんですけど、消費者の好みはもともと多様だったんじゃないかって思うんですよね。解像度が上がったから多様なニーズに対応できるようになっただけ。
長谷川: 牛乳1つとっても、低脂肪乳とか無脂肪乳とかいろいろ出てきているもんね。選択肢が格段に増えている。
柳瀬: とても良いことですよね。小売はより良いサービスを追求するのが使命。お客さまの感覚に沿うのが正しい、難しいことはテクノロジーで解決する。低脂肪乳と無脂肪乳が何対何で売れるのか把握し、在庫管理をきちんとして、毎日新鮮な牛乳を届けるというのが小売業としての正しい姿。そこにデータの使い道がある。無脂肪乳のほうが断然売れるから無脂肪乳だけ置いておこうというのは、何か違う気がしますね。
【前編を読む】
グッデイ 代表取締役社長 柳瀬隆志氏プロフィール
1976年福岡生まれ。 東京大学経済学部卒業後、2000年三井物産入社し、食料本部に所属。冷凍食品等の輸入業務に取り組んだ後、2008年嘉穂無線に入社。 営業本部長・副社長を経て、2016年6月嘉穂無線ホールディングス、及びグッデイの社長に就任。2017年4月からは、グループ会社のカホエンタープライズにて、クラウド活用やデータ分析を行う事業にも取り組んでいる。
ロケスタ 代表取締役社長 長谷川秀樹氏プロフィール
1994年、アクセンチュアに入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebookなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進する。2011年、同社執行役員に就任。2013年、ハンズラボを創設し、代表取締役社長に就任(東急ハンズ執行役員を兼任)。初年度から任期中黒字経営を達成した。その後、メルカリ執行役員CIOを経て、2019年12月、プロフェッショナルCDOとして独立。日本のデジタル変革を加速させるため、24時間365日働く(働くと遊ぶを融合させる)所存。
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