売れる店と売れない店は何が違うのか――データだけでは分からない「両者を分かつもの」:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」(2/3 ページ)
社長が自らが先頭に立って統計学を学び、データドリブンな経営を目指す――。そんな取り組みで注目されている「グッデイ」の三代目社長 柳瀬隆志氏に、「売れる店と売れない店を分かつもの」について聞く。
「自走する部下」を育てるコミュニケーション術
柳瀬: コーチングのフレームワークに、「自分の言葉で考える」というのがあるんです。人間の意識や思考を変えようと思ったら、質問をすると良い。「こうしましょう」というより、「こうするにはどうすればいいと思う?」と聞いたほうが、聞かれた方の意識の中で関与する度合いが上がるらしいんです。
質問されると、どうしても考えちゃうんですよね。先日も長谷川さんに「柳瀬さんって不思議ちゃんだよね」と言わたんですけど、僕はどうして不思議ちゃんなのか、それをどう説明すれば伝わるのか、ずっと考えちゃうんですよね。
長谷川: 何げなく発した言葉で悩ませてしまったようで、ごめんなさい(笑)。
柳瀬: 何か答えた後も、ずっと考えちゃうんですよね。「あのとき、あんな風に答えたけれど、あれで本当に良かったのかな」って余韻がずっと残るんです。「こうしましょう」「はい」だと、意識が断ち切れてスパッと忘れちゃうんですけど。
長谷川: 確かに、「こうしましょう」だと命令されたみたいだけど、「こうするにはどうしたらよいと思いますか?」という問いかけだと、聞かれた方にオーナーシップが生まれそうですね。
柳瀬: 質問するようになってから、社員とのコミュニケーションが取りやすくなったんですよね。それまで「こうしましょう」と言うと、「はい、分かりました」という返事しか返ってこなくて、やりづらさを感じていたのですが、「こうするにはどうしたら良いと思いますか?」「何かアイデアはありますか?」だと僕も話しやすい。強制じゃないし、社長としてのポジショントークで終わらないから。
それに質問すると、すごくいいアイデアが出てきたりするんですよ。僕が思い付きもしないような発想が出てきたりする。ちょっと違うな、と思っても、「それは違うんじゃないの」と言うのではなく、「なぜそう思うの?」「他にもアイデアはないですか?」と、あえてスルーして議論を深めてみるとかね。
思考の枠を広げるコミュニケーション法
長谷川: 一方的にしゃべって終わりっていう上司もいますよね。部下もそれを「はいはい」と聞いているだけ、みたいな。
柳瀬: それだとコミュニケーションがとれていない感じがするじゃないですか。長谷川さんは、例えば1on1(上司が部下を育成するために行う個人面談)のとき、部下とどんな話をしているんですか?
長谷川: その人それぞれだね。あまりこれを話そうとか気負って考えてないかな。沈黙も良しとするみたいな。試験じゃないんだから、偽りの自分が出てきて話すよりも、素のままでよくない? と思うわけです。
柳瀬: コーチングの先生に質問のコツを教えてもらったんですけど、サッカーで言うと、逆サイドにパスするようなものなんですって。意識がこの話に向いてるなと思ったら、そこを掘り下げるのではなく、わざと別の話をするんです。そうすることで思考の枠が広がって、視野が広がっていく。それを常に意識しながら質問を投げかけるんですって。
長谷川: メンタリストみたいやね。例えば仕事の話を聞こうと思ったら、家庭の話から入ってみるとか?
柳瀬: そうそう。全然関係ないスポーツの話をしてみたりとか。違う話をしても、根っこにある価値観は同じなのでつじつまが合って、元の議論を深めることになるんです。
関連記事
- 良いものをそろえれば、結果は後からついてくる ――成城石井 執行役員 早藤正史氏
こだわりの品ぞろえにファンも多いスーパーマーケット成城石井を率いる執行役員の早藤正史氏。そのユニークな商品展開や経営路線の根底にある早藤氏の経営哲学やリーダー論とは。 - どん底に追い込まれたから大逆転がある――日清食品 執行役員 CIOグループ情報責任者 喜多羅滋夫氏
P&G、フィリップモリスジャパンなど、外資系企業の日本法人のシステム部門を経て、日清食品でCIOを務める喜多羅滋夫氏。華やかな経歴を持ちながら、実は「紆余曲折あっての人生」だったという喜多羅氏が語るITエンジニアの成長の糧となる挑戦やキャリア形成のコツとは。 - 「やらされ感」じゃなく「やってる感」で動く職場にする方法を教えよう――東急スポーツオアシス 代表取締役社長 平塚秀昭氏
「Apple Watchを着けて泳げるプール」を日本で初めて銘打ったフィットネスクラブ「東急スポーツオアシス」を率いる東急スポーツオアシの表取締役社長 平塚秀昭氏が語る、従業員が楽しく働く職場づくりの極意や、組織を変えるチャレンジマインドとは? - 日本企業は今こそ、手を組んでチャレンジに打って出るべき――カインズ 代表取締役社長 土屋裕雅氏
「AWS re:Invent 2017」に刺激を受けて、翌年の年頭朝礼で「IT企業宣言」をしたというカインズ代表取締役社長の土屋裕雅氏。SPA(製造小売業)にもIT改革をもたらすべく、CEO自らITのトップランナーたちに学ぶ土屋氏が描く、業界を超えたイノベーションとは。 - 17歳の起業家はなぜ、レシート買い取りに注目したのか――ワンファイナンシャル創業者・CEO 山内奏人氏(前編)
メルカリのCIOを務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。第2シーズン初回のゲストは、まだ飲めない17歳の起業家、レシート買い取りアプリ「ONE」(ワン)の公開で一躍有名になったワンファイナンシャルCEOの山内奏人さんです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.