売れる店と売れない店は何が違うのか――データだけでは分からない「両者を分かつもの」:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」(1/3 ページ)
社長が自らが先頭に立って統計学を学び、データドリブンな経営を目指す――。そんな取り組みで注目されている「グッデイ」の三代目社長 柳瀬隆志氏に、「売れる店と売れない店を分かつもの」について聞く。
メルカリのCIOを退任し、プロフェッショナルCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)の道を切りひらくと宣言した長谷川秀樹氏が、改革者と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。
今回のゲストは、北部九州・山口を中心にホームセンター65店舗を運営する「グッデイ」の三代目社長 柳瀬隆志氏。独学で統計分析ツールのRや、プログラミング言語のPythonを習得し、社員とともにデータドリブンな経営を目指しています。
小売におけるデータ分析の面白さ、難しさを聞いた前編に続き、後編では「社内からヒーローを輩出していきたい」という柳瀬氏の人材育成、マネジメント手法と、データだけでは分からない「売れる店と売れない店を分かつポイント」について掘り下げます。
目次
社内からヒーローを輩出していきたい
長谷川: 前編では、柳瀬さんとともにTableau(データの分析/ビジュアル化ツール)を習得して業務に生かそうと取り組む社員の皆さんにも光るものを感じました。柳瀬さんは、人材育成やマネジメントにおいても何か特別な取り組みをしているんですか?
柳瀬: 「得意を伸ばせ」――これに尽きると思います。新入社員の女性が、「海外に行って仕事がしたい」と自己紹介したのですが、そんなふうにうちの社員には、どんなことでも良いから「これをやりたい」「これが得意」というものを見せてほしいですね。そうすれば、こちらもいろいろなリソースを使って、その人の得意を伸ばそうと働きかけられますから。
園芸でも、『みんなの趣味の園芸』(NHK出版)が開催する「寄せ植えコンテスト」で優秀賞、最優秀賞をとる社員がいるんです。会社を飛び出してハウステンボスで庭を作ってコンテストで最優秀賞を受賞したんですよ。僕は、自分が“中の上のジェネラリスト”だと感じている分、特定の分野で高い能力を発揮する人に憧れていて、そういう人をプロデュースして世に出すことに興味があるんです。できる限り、社内からヒーローを輩出していきたいと思っています。同僚にヒーローがいると、その人をお手本に周囲も育つんです。
「人が変わる瞬間」を、どう作るか
柳瀬: 毎月の店長会議では、社外からゲスト講師を呼んでいます。僕が感銘を受けた方をお招きして話してもらうことで、活躍している人の考え方やマインドを、社員に知ってもらいたいんです。活躍している人は、決してネガティブなことを言わないんですよね。独特な感覚で困難を乗り越え、楽しそうにやっている。
店長会議に出席しているメンバーの中には「できなくても仕方ないよね」というものもあったのですが、そこで終わってほしくないんです。
長谷川: 講義を受けた社員が変わってきたという実感はありますか?
柳瀬: 毎回、Googleフォームで感想を書いてもらうんですけど、最初は当たり障りのないコメントが多かったんです。でも、半年もすると感想の量と質が変わってきたんですよね。どんどん長く具体的になって、僕も全部読み切るのが大変なほど。今では言語解析でどんなワードが多いのか調べて把握しているくらいです。
長谷川: 社内研修って、斜に構えてあまり感想を書かない社員もいますよね。それなのに、こんなにたくさん書いてる。
柳瀬: そうなんですよ。僕がすごい人から聞いた話を伝えたり、自分の言葉として話すというやり方もあると思いますが、やっぱり突破した本人が生き生きと話してくれたほうが伝わるんですよね。人を変えるのは説得ではない。あるべき姿を見せると、そちらに寄っていくんですよ。
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