京都勝牛は“牛カツ戦争”を制するか 焼き肉とステーキを経てたどり着いたビジネスモデルに迫る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
牛カツ最大手「京都勝牛」が積極攻勢。運営会社は焼き肉やステーキを経て牛カツにたどり着いた。国内だけでなく海外にも目を向ける戦略に迫る。
牛カツ競争の行方は
牛カツのルーツには諸説がある。戦後間もない1946年創業の日本橋人形町の「洋食 キラク」が開発した「ビーフカツ」が熟成肉をクイックかつミディアムレアで提供しており、源流の1つと目される。著名な料理評論家の山本益博氏がこの料理を発掘し広めたといわれており、同店から分派した「よそいち」と共に、名物料理となっている。
レアに揚げたカツを刺身のような感覚で、箸で食べやすいようにさらに細かく切り始めたのは、1996年創業の新橋「牛かつ おか田」と目され、わさびじょうゆで食べる現在の牛カツの形をつくったとされている。
主たる牛カツ専門店は、京都勝牛の他に、「牛かつ もと村」(27店)、「牛かつ あおな」(6店)がある。両チェーンとも13〜14年頃の創業で東京を中心に行列ができる人気店となっている。
もと村のメニューは、「牛カツ麦飯セット」(130グラムで1300円、260グラムで2100円)、「牛カツ麦飯とろろセット」(130グラムで1400円、260グラムで2200円)、追加牛カツ(130グラムで800円)しかない。基本、牛カツ定食のみのシンプルなメニューだ。セットには麦ご飯、みそ汁、千切りキャベツ、ポテトサラダ、わさび、しょうゆとわさびソースが付いていて、まずはわさびじょうゆで食べることが推奨されている。卓上には岩塩が置いてある。麦ご飯は1杯のみお代わり無料。
固形燃料で熱する小さな石盤が1人1台提供される。レアに近い状態で提供された牛カツを、お好みの焼き加減に焼いて食べる。
もと村では「牛かつを日本の食文化にする」と豪語。台湾の台北に進出した。
あおなの牛カツは内ももの部位を使用し、ニュージーランドのオーシャンビーフと黒毛和牛から選べるのが特徴。黒毛和牛はさらにA5、A5霜降りが選べる。A5霜降りサーロインが提供される店もある。また、サイズが100グラム、150グラム、200グラムと3段階に分かれている。
この店の定食では、ご飯が白米と十六穀米から選べる。それに季節のサラダ、スープ(みそ汁)が付いている。十六穀米の使用や、キャベツの千切りに代わってサラダとドレッシングが提供されるのが、差別化のポイント。肉はレア感が非常に強く、ローストビーフのようだと形容する人もいる。しょうゆと特製のたれで食べる。すりおろしの国産わさびが添えられている。200円をプラスすればとろろが付けられる。
代表的なセットメニューは、ニュージーランドビーフが1150円、黒毛和牛が1480円、黒毛和牛霜降りが1680円などとなっており、全般に安価な設定だ。ニュージーランドビーフと黒毛和牛のミックスもある。
新宿の店舗ではステーキ、鉄板焼などもメニューに加えており、試行錯誤しているようだ。ここ数年で急速に広まった牛カツ。各社で切磋琢磨しながらブランドを大事に育てて、和食の代表的な料理にまで昇華させてほしい。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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