コンビニおでん「無断発注」「販売中止」問題が暴く画一的ビジネスの限界:新連載・コンビニオーナー“大反乱”の真相(2/4 ページ)
冬のコンビニの人気商品・おでんに異変。無断発注問題や店舗によっては販売休止の動きも。オーナーへの生々しい現場取材を通じてその真因を追う。
元コンビニ幹部「本部社員にはノルマ、考課対象に」
ある大手コンビニで本部幹部社員を務めていた山田一郎さん(仮名)は、「加盟店を指導するスーパーバイザー(セブンではOFCと呼ぶ)には、担当地域での推奨商品発注額のノルマが課され、人事考課の対象になっています」と、おでんなどの押し込みに本部社員が血眼になる背景を説明する。
セブンの永松文彦社長は今回の不正の発表に際し、ノルマの存在は否定しつつも「(本部社員に)数字に対するプレッシャーがあったのかと思う。担当者だけの問題で片付けてはいけない」と述べ、本部社員に課された営業目標がプレッシャーになっている実態を認めた。
11月27日、セブンは無断発注問題を受け、オーナーからの通報を電話で受け付けるフリーダイヤル「無断発注ホットライン」を開設した(12月26日まで24時間受付)。
本部社員側による強引な発注推奨を早速通報した大阪府内のセブンオーナーは「やはり店番(加盟店に個別にふられた番号)を聞かれました。オーナー相談室にそのまま伝えるのだそうです。気の弱いオーナーさんなら、圧力を恐れて口ごもってしまうでしょう。(通報を)応対した人に役職を尋ねると、本部から依頼された外部の会社でしたが、会社名は『守秘義務があるので言えません』とのことでした」と明かす。
おでん中止の背景に「手間」と「廃棄」
無断発注問題と並んでコンビニおでんを巡って物議を醸しているのが、「おでんを取りやめる店舗の増加」のニュースだ。人気商品にも関わらず扱いを止める背景には、深刻な事情がある。
そもそも、おでんがコンビニを代表する商品になった背景には、根強い人気に加え、「粗利率の高さ」がある。コンビニで販売される商品の粗利率は平均30%程度(70円で仕入れたものを100円で売る)だが、おでんの粗利率は50%(50円で仕入れたものを100円で売る)になる。
「おでんは売れば売るほど利益が出る」と本部が推奨するゆえんだが、現場の納得感は低い。原因には、手間がかかる商品であることと、廃棄が多い点がある。
24時間営業を含めコンビニの持続可能性に黄信号が点滅する中、経済産業省は「新たなコンビニのあり方検討会」(座長=伊藤元重学習院大学教授)を設置し、全国のオーナーからヒアリングを実施してきた。そこではこんな意見が出た。
「学生には、コンビニの作業がおでんやフライヤー、中華まんやドーナツなど多方面にわたり、複雑な割に時給が最低賃金近くということから敬遠されている」
「バイトの範囲を超えている。レジをやりながらファストフード作って、ファストフード作りながら掃除してというように、やることが多すぎて」
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