コンビニおでん「無断発注」「販売中止」問題が暴く画一的ビジネスの限界:新連載・コンビニオーナー“大反乱”の真相(3/4 ページ)
冬のコンビニの人気商品・おでんに異変。無断発注問題や店舗によっては販売休止の動きも。オーナーへの生々しい現場取材を通じてその真因を追う。
業務は大量・複雑、時給は最低賃金レベル
コンビニは大手3社の大量出店の結果、市場が飽和状態に近い。それでも日販(1日の売上)を維持・増加させようと、毎週のように新商品を投入しコンビニで利用できるサービスを増やしていった結果、「お店での仕事」が多様化、複雑化の一途をたどった。
調理機器を洗浄し、おでんを調理し、だしが減ったら加え、鮮度を保つため時間がきたら売れ残りを廃棄する。具材にはそのままだしに入れられるものもあるが、袋に保存料が入っているためいったん洗わなければならないものもある。おでん(を含むファストフード)の提供は「やることが多すぎ」の象徴になっているのだ。しかも時給は最低賃金レベルに抑えられているため、学生から敬遠されてしまうのだろう。
手間がかかるということは、オーナーから見れば時給というコストがかかることでもある。
経産省検討会でも、こんな意見が出た。「(おでんなど店内で調理する商品の売価が100円の場合)粗利は50円で、(加盟店から本部が吸い上げるロイヤリティーが粗利の55%だと)本部が27.5円、お店が22.5円(になる)。ただ、調理費用が20円ぐらいかかるとしたら最終的な利益は2.5円分にしかならない」。
つまり「高い粗利率」というのは、おでん作りにかかる人件費の一部(店内調理等にかかるアルバイトの時給)が原価に入らないため、そう見えるだけ、とも言える。
時間来たら「一律で廃棄」
しかもおでんは鮮度管理のため、時間がきたら売れ残りを廃棄しなければいけない。「おでんの具材には、肉類のように味を出すものと、卵やこんにゃくにように味を吸うものがあって、後者は時間がたった方がおいしいのですが、決まりなので一律に捨てています」と千葉県のセブン・オーナーは話す。
見栄えを良くするため本部は、店頭の「鍋」の中におでんをぎっしり詰めるよう指導している。そのため天気や気温、時間帯によっては、せっかく作っても捨てる量が多くなりがちだ。採算分岐点となる売上高は1日1万円前後とされるが、最近は売り上げが伸び悩み、そこまでいかない店も多い。
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