投資用不動産を扱うグローバル・リンク・マネジメントの研究機関であるグローバル都市不動産研究所は、各国の五輪開催後の景気動向およびロンドン五輪前後の不動産価格の動向について調査し、2020年東京五輪後に東京都の不動産価格がどうなるかを予測した。
まず、18年における東京への人口流入・流出状況を見ると、東京都区部の公示地価の対前年平均変動率は、14年以降、住宅地、商業地とも全国に先駆けてプラスに転じ、19年には住宅地で4.8%増、商業地で7.9%増となった。その推移は、区部都心部で力強い上昇が始まり、その後区部南西部に波及、18年からは区部北東部で増加率を高めていることが分かる。
近年の区部北東部や臨海部の地価の上昇は、東京スカイツリータウン開業、大学移転などに伴う北千住などの都市開発、湾岸エリアのタワーマンションや五輪関連施設の建設など、都心の北東部、臨海部が改めて注目された結果といえる。
次に、過去30年ほどの夏季五輪開催国について景気動向を見ると、スペイン、オーストラリア、中国、ギリシャは、開催後にGDP成長率が低下しているが、いずれもITバブル崩壊やリーマンショックなど他の影響が大きいとされている。
一方、アメリカとイギリスではGDP成長率が上昇。特に、ロンドン五輪では都市の再生や環境への配慮、既存施設の活用やコンパクトな会場づくりが計画され、五輪後にもそれらの施設をレガシー(遺産)として利用することが目指された。その結果、都市の新たな価値の創出や、五輪後の観光・ビジネス関係の集客力の向上に貢献したといわれている。
東京五輪も、このコンセプトをモデルにコンパクトな五輪作りを目指している。過去の五輪前後の景気動向を参考にすれば、少なくとも五輪終了を主要因に景気が急速に減退することはないだろうと予測される。
では、五輪は不動産価格にどのような影響を与えるのか。ロンドン五輪前後の不動産価格の動向を見ると、区によってばらつきがあるものの、ロンドンの都心6区はロンドン平均を超える価格に上昇している。
ロンドン都心6区(シティ、カムデン、ウエストミンスター、イズリントン、ケンジントン・アンド・チェルシー、サザーク)の住宅価格。12年五輪開催後も高級住宅街のあるシティ、ウエストミンスター、ケンジントン・アンド・チェルシーは急激に伸びている
一方、東京では13年以降、都心を中心に住宅価格が上昇。最大のプラス要因として、東京都区部全体で35年ごろまで、都心区では40〜45年ごろまで人口増加が見込まれており、住宅需要は今後も続くだろうとグローバル都市不動産研究所は分析している。
また、海外からの旅行者は、五輪以降も堅調に増加すると政府が予測しているほか、都心部を中心とした東京の大規模都市開発プロジェクトが今後も続き、オフィス供給、住宅供給がさらに行われる状況だ。27年開通予定のリニア中央新幹線によって、東京の経済力がさらに高まるという期待もある。
マイナス要因としては、米中摩擦やヨーロッパ諸国の成長鈍化によって今後の世界経済が減速に向かい、東京への投資が鈍化する可能性が指摘される。国内的には消費性向の減退による景気の冷え込み、ローンの貸付利率の上昇、増加傾向にあった海外からの旅行者の鈍化などが懸念され、これらが複合的に不動産の購買意欲低下のリスクにつながる可能性があるとしている。
ロンドンの不動産価格の動向からも明らかなように、東京でも全ての地域が一様に好条件というわけではない。景気が減退する局面になるとエリアの差が顕著に表れるため、今後の動向を十分に注視する必要がある。
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