日本郵政の元凶は「多すぎる郵便局」と考える、これだけの理由:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
かんぽ生命の営業現場が、大変な騒ぎになっている。高齢者をだまし、契約を結ぶ。その一線を超えられない人に対して、「お前は寄生虫」などと罵声を浴びせる。典型的なブラック企業なわけだが、なぜこのような組織になってしまったのか。
数が増えたように見せる「粉飾テク」
ご存じのように、郵政民営化の基本的な考え方は、ユニバーサルサービスということで過疎地などにもあって、あまりもうけを生まない郵便事業を維持するために、金融・保険で稼いで金を突っ込むという構造である。
しかし当然、金融・保険も人口減少の影響を受ける。若者が少ないので新規契約者はなかなかつかまらない。だから、かんぽ生命のノルマかけられた人々は「二重契約」などのインチキに走った。1人の高齢者に契約を解除させて、無保険期間をつくって再び契約をさせれば、「新規」になる。人口減少社会の中で、数が増えたように外形的に見せる「粉飾テク」と言っていいだろう。
このような問題を解決する方法は究極的には2つしかない。日本の人口を増やすか、郵便局の数を減らすかである。残念ながら日本の人口減少はもう食い止めることができないので、後者しかない。ユニバーサルサービスをうたう以上、現在の郵便局を死守しなくてはいけないという原理原則は分かるが、それを死守するために高齢者への組織的詐欺行為、若者への陰湿なイジメなどが加速度的に増えていくことを踏まえると、果たしてどちらが社会へのダメージが深いかを考えなくてはいけない。
これこそが、郵便局は減らすしか道がないと筆者が考える理由だ。
総務省の郵便局活性化委員会の「諸外国の郵便サービス」(平成30年12月7日)によれば、日本の面積約37.8万平方キロメートルと近いドイツ(約35.7万平方キロメートル)の郵便局は1万3000局である。ドイツは日本よりも4000万人ほど人口が少ないことを差し引いても、2万4000局は明らかに多い。
日本郵便によれば、1日の窓口来客数が20人以下の郵便局は3448局。人口減少で利用者は減少していくなか、これまでのような「高齢者詐欺」も禁止されるので、金融・保険のカネで維持することも難しい。つまり、遅かれ早かれ運営が行き詰まるのだ。
ならば、「郵便局」という「器」にいつまでもこだわるのではなく、IT、コンビニ、宅急便など他の民間サービスを活用して、過疎地の郵便局がこれまで担っていた役割を次につないでいくほうが長期的な視点で見れば、はるかに希望があるのではないか。
関連記事
- ちょっと前までチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が、減速した理由
ブームの牽引役などとチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が叩かれている。2018年12月決算は、8年ぶりに赤字。低迷の原因として、米国での閉店や類似店舗の増加などが指摘されているが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。それは……。 - 大戸屋が炎上した背景に、ブラック企業と日本軍の深い関係
外食チェーン店を運営する「大戸屋ホールディングス」が、大きく揺れている。「ガイアの夜明け」の中で、同社の社長の言動が放送され、「ブラック企業」「パワハラ」などと批判されているのだ。なぜ、このような事態になったのかというと……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.