日本郵政の元凶は「多すぎる郵便局」と考える、これだけの理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
かんぽ生命の営業現場が、大変な騒ぎになっている。高齢者をだまし、契約を結ぶ。その一線を超えられない人に対して、「お前は寄生虫」などと罵声を浴びせる。典型的なブラック企業なわけだが、なぜこのような組織になってしまったのか。
典型的なブラック企業のスタイル
会計検査院の「日本郵政グループの経営状況等について」(平成28年5月)という報告書を読むと、現場が大変なことになっているのではないかといったことがうかがえる。これによると、日本郵政グループの従業員数は、特別会計時代の2002年に約27万人。それが14年には約22万人にまで減少している。
しかし、人員がじわじわと削られているのに、郵便局の数はほとんど変わっていない。報告書内の記述を引用しよう。
『日本郵便株式会社法施行規則(平成19年総務省令第37号)により、いずれの市町村(特別区を含む。)においても、一以上の郵便局を設置しなければならないとされていること、また、過疎地においては、19年10月から24年9月までは19年10月時点の郵便局ネットワークの水準を、民営化法改正法が施行された24年10月からは同月時点の当該水準を維持することを旨とすることが規定されていることなどから、郵便局数は14年度末の24,752局から19年度末の24,540局に僅かに減少した後、おおむね横ばいで推移しており26年度末には24,470局となっている』
この傾向は最近も変わっていない。日本郵政のWebサイトによれば、18年3月31日時点のグループ従業員数は19万3910人。一方、郵便局の数は2万4033となっている。つまり、02年から16年間で郵便局の数は3%ほどしか減っていないのに、グループ従業員は30%も減っている計算だ。
人はガクンと減っているのに、昔と変わらぬ高いサービスを提供せよ。この「無理」を「現場のがんばり」で乗り越えようとさせるのがブラック企業である。
「ブラックとかじゃなく、地域のインフラなのでもうからないからと簡単にやめられるわけがないだろ」というお叱りもあるだろうが、日本の人口はこの16年でおよそ100万人以上も減っている。02年に比べて宅急便などのサービスも飛躍的に充実し、高齢者の中にもネットやスマホを使いこなす人も現れた。簡易保険に代わる金融商品も山ほど登場している
これだけ時代が変わっているのだから当然、郵便局のニーズも減っているはずなのに、「2万4000」という数が変わらない。収益も減るのにこの巨大なサービス網を維持していくという「無理」を、果たして誰がツケを払うのかといえば現場、そう、かんぽ生命の販売ノルマを課せられた人たちだ。
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